校歌
みなもと遠く
玉を溶き
すゑはるばると海に入る
水こそ鏡
朝夕に
いそしむ窓の花樗
ゆかりの色に匂ふかな
赤鬼のみ山
うちなびけ
雲吹き落せ初あらし
椎の若森
ゆずり葉の
栄ゆる緑目もさやに
自治の校風振ふべし
ああすぐれたる
まなびやの
庭はあけぼの露深し
望みぞ多き
ま盛りの
しろつめ草の幸分けて
少年の日をたのしまん
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校歌のいわれ
附属中学校に入った当時、「鏡の流れ」を作詞し、真鍋伝一氏に曲を付けてもらいました。
まもなく正式の校歌を作ろうということになり、やはり真鍋氏の作曲で、「みなもと遠く」ができました。前の歌と同工異曲ですが、これが正式ということに決まり、前のは第二校歌のようになりました。
少し説明しますと、第一連は「孟子」の「原泉混々として昼夜をやめず」を採ったものです。「おうち」はセンダンのことで、ここにはその老樹が並木をなしており、夏の初めには鰯々たる紫雲の花を見せました。「ゆかりのいろ」はむらさきのことです。
第二連の「あかき」は山の名で朝倉神社の後ろにある形のいい山です。松の美しい山ですが、しいの木も多く、若葉のころはみごとです。歌詞は万葉の「なびけこの山」や芭蕉の句「さみだれの雲吹き落とせ大井川」の一部を借りて作りました。
第三連の「しろつめぐさ」はクローバのことで、その四つ葉が幸福の象徴とされる由来はフレイザーの金枝編にも出ています。つめくさというわけは江戸時代にオランダの医療器具が箱に入れて送られてきたとき、隙間にこれをつめたのだそうです。このしろつめぐさが広い校庭(もとの連隊の営庭)いちめんに生えていまして、そこで遊んでいる生徒は実に楽しそうでした。
以上のほかに、朝の集まりのときに歌うのを作ろうというので、「朝日子の歌」が生まれました。朝会のとき野暮な号令や訓示説教をするな、朝会は歌かマスゲームか、その他のことは何一つするなというのが私の考え(と言ってもこれは西山先生の受け売り)、真鍋さんが賛成してくれて、アコーデォンをひき、ポケット歌集もこしらえました。
内田八朗(「教育に生きる」より)