公開日 2018年4月9日
医療学系基礎医学部門兼総合研究センターの坂本修士准教授、樋口琢磨助教らとフランスのInstitute of Human Genetics, University of Montpellier及び香港?State Key Laboratory of Oncologyとの共同研究により、機能性小分子RNAの生合成において主要な役割を果たす核酸切断酵素Dicerの発現制御に関して、新たな分子機構が発見され、その研究成果がNature Publishing Groupが刊行する「Cell Research」(2018年3月21日付)に掲載されました。
様々な悪性腫瘍において、「Dicerの産生低下」と「がん細胞の転移能の上昇や予後不良群の増加」とが高い相関性を示すことが知られています。一方で悪性腫瘍におけるDicerの産生低下機構に関しては、不明な点が多く残されています。
本研究では、卵巣がんの予後不良群においてDicerの発現低下が生じることが示されています。その分子機構としては、Dicer mRNA前駆体のイントロン中で生じる「二本鎖RNA結合タンパク質NF90の低下によるマイクロRNA(miRNA)3173の初期転写産物のプロセッシング促進」が関与することが示されました。実際、予後不良群の卵巣がんにおいてはDicerに加えNF90の発現も低下していることが示されています。
本研究により、卵巣がんの進展において機能性小分子RNA生合成制御因子が深く関与することが示唆されました。
【発表論文】
雑誌名: Cell Research
論文タイトル: An NF90/NF110-Mediated Feedback Amplification Loop Regulates DICER Expression and Controls Ovarian Tumor Progression
著者: Jérôme Barbier, Xin Chen, Gabriel Sanchez, Muyan Cai, Marion Helsmoortel, Takuma Higuchi, Pierre Giraud,Xavier Contreras,Gangjun Yuan,Zihao Feng,Rima Nait-Saidi,Olivier Deas, Lisa Bluy, Jean-Gabriel Judde, Sylvie Rouquier,William Ritchie, Shuji Sakamoto, Dan Xie, and Rosemary Kiernan
論文掲載HPのURL: https://www.nature.com/articles/s41422-018-0016-8