公開日 2019年12月4日
本学自然科学系農学部門 足立真佐雄教授らによる下痢性貝毒標準品を高生産する新奇海産有毒渦鞭毛藻の分離?同定に関する研究成果が、「Harmful Algae」の電子版(2019年11月25日)に掲載されました。
本研究成果は、足立教授らが参画した戦略的イノベーション創造プログラム(SIP※)の研究課題「未利用藻類の高度利用を基盤とする培養型次世代水産業の創出に向けた研究開発」により得られた成果です。足立教授らは、国立研究開発法人水産研究?教育機構中央水産研究所?水産物応用開発研究センター長の鈴木敏之博士らと共同して、海産渦鞭毛藻の中でも下痢性貝毒であるオカダ酸(OA)やジノフィシストキシン1(DTX1)を生産するProrocentrum属藻に注目し、これまでで世界最高となる高収量でこれらの毒を生産する新奇株を分離?培養することに成功しました。
現在、国内では各県において貝類に含まれるこれらの毒量が監視されています。これらの毒の公定法として、従来マウス毒性試験が用いられてきましたが、2017年4月よりLC/MS/MSを用いた機器分析に移行したことから、本分析に必須となる両毒の標準物質の需要が高まっています。しかし、現在国内におけるこれらの供給体制が整っておらず、とりわけDTX1は不足しています。今回のSIP事業に得られた成果により、持続的かつ安定的な下痢性貝毒の監視が実現し、下痢性貝毒に起因する経済的問題の軽減や、我が国の食の安全確保に繋がることが期待されます。
論文名:Abundance of the benthic dinoflagellate Prorocentrum and the diversity, distribution, and diarrhetic shellfish toxin production of Prorocentrum lima complex and P. caipirignum in Japan (DOI: 10.1016/j.hal.2019.101687)
論文掲載HPのURL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S156898831930160X
また、本成果は以下の特許の出願にも繋がっています。
出願番号:2018-092837
発明の名称:下痢性貝毒ジノフィシストキシン(DTX1)高生産能を有する有毒渦鞭毛藻Prorocentrum株
※内閣府総合科学技術?イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。