公開日 2023年4月28日
医学部医学科微生物学講座の橋田裕美子助教及び大畑雅典教授らの研究グループの研究成果が、ウイルス学の国際誌『Virology Journal』に掲載され、2023年4月17日に電子版が公開されました。
人の体のさまざまな部位には微生物叢(※1)が常在します。皮膚にも微生物叢が形成されていますが、これまでの研究は細菌に注目することが多く、皮膚に常在するウイルスの感染状況については不明な点が多く残されていました。
クタウイルス(CuV)は、2016年に発見された新しいヒトパルボウイルスで、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)との関連性が指摘され、現在注目されています。CuVは正常な皮膚からも検出されていますが、その感染状況や遺伝子型については、ほとんど知られていません。
さらに、CuVの疫学的研究は、すべてヨーロッパに住む個人を対象としており、他の地域での感染状況に関するデータはありませんでした。
本研究グループは、日本国内に居住する日本人健常者の皮膚からCuVの検出を行い、60歳以上の高齢者においてCuVDNAの検出率及びウイルス量が増加していることを明らかにしました。
また、検出されたCuVDNAの全塩基配列を同定し解析した結果、日本人から検出されるCuV株はこれまでに報告されている欧州株とは異なる遺伝子型を有していることが判明しました。
本研究により、CuVは不顕性感染(※2)の状態で皮膚に常在することが明らかになりました。CuVの感染自体は病的ではありませんが、CTCL発症への関与など皮膚の健康にどのような影響を及ぼしているのか、さらに研究を進めていきます。
<論文名> Cutavirus on the skin in an Asian cohort: identification of a novel geographically related genotype
<和訳> アジア人皮膚におけるクタウイルス感染状況:新しい地理的関連遺伝子型の同定
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(※1)微生物叢…ある特定の環境に生息する微生物の集まりであり、マイクロバイオームとも呼ばれる。細菌やウイルスなど多様な微生物によって構成されており、人の健康と密接に関係している。
(※2)不顕性感染…ウイルスや細菌などに感染しているものの、明らかな症状を示さない状態のこと。
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