公開日 2023年5月30日
2023年3月に黒潮圏総合科学専攻(博士課程)を修了したJoshua Vacarizasさんの学位研究の一部として、造礁性サンゴの性染色体の同定や性決定様式の推定を試みた研究成果が、2023年5月18日付で国際学術誌『PLOS ONE』誌に掲載されました。
雌雄同体が多くを占める造礁性サンゴの中で、雌雄異体であるキクメハナガササンゴの染色体を対象として、他の動物群で性決定に関わるとされるdmrt(doublesex and mab-3-related transcription factor)の新規遺伝子を得るとともに、それがオスのゲノムDNAのみに存在することを確認しました。また、染色体分析により、受精後の胚の約半数にのみこの遺伝子の存在を検出しました。
これらの結果から、dmrt遺伝子のある染色体は性染色体であり、造礁性サンゴはヒトと同じようにXX(メス)、XY(オス)の性決定様式であることが示唆されました。
これは、造礁性サンゴを含む刺胞動物の性染色体を分子細胞遺伝学的情報に基づいて同定した最初の報告です。
<論文名>Cytogenetic evidence and dmrt linkage indicate male heterogamety in a non-bilaterian animal
著者:J. Vacarizas, T. Taguchi, T. Mezaki, Sam Edward Manalili, R. Kawakami and S. Kubota
論文掲載HP:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0285851