◆自然科学系農学部門の足立真佐雄教授と海洋コア国際研究所の萩野恭子客員講師らの研究グループの成果が、「Science」に掲載されました

2024年4月12日

海産微細藻類における窒素固定型シアノバクテリアのオルガネラ化(細胞内小器官化)の進行を明らかに

 

 自然科学系農学部門の足立真佐雄教授と海洋コア国際研究所の萩野恭子客員講師らの研究グループの成果が、2024年4月12日付けで「Science」に掲載され、同誌の表紙を飾りました。 

 海産の単細胞微細藻類であるハプト藻Braarudosphaera bigelowiiは、その細胞内部に窒素固定型のシアノバクテリア由来の構造(UCYN-A)を保有することが知られており、このUCYN-Aは海洋の窒素循環において大きな役割を果たしていると考えられています。しかし、B. bigelowiiとUCYN-Aはいずれも長年にわたり培養することができなかったことから、その窒素固定量や相互作用の詳細は不明でした。この様な状況の下で、本論文では、高知県産の「ところてん」を原材料に開発された培地を用いて、B. bigelowii の安定培養に世界で初めて成功しました。これにより得られたB. bigelowii の細胞を用いて、その三次元構造を検討することにより?ミトコンドリアに続いてUCYN-Aが倍加しその後、葉緑体と核が倍加する、つまりUCYN-A の倍加?分裂は、B. bigelowiiにより厳密に" 制御 "されていることを明らかにしました。さらに、B. bigelowiiにより生産されたタンパク質が、UCYN-Aに輸送されることも明らかにしました。

 以上の結果から、B. bigelowiiの細胞内部において、UCYN–Aのオルガネラ化が進行していることを明らかにし、窒素固定に関わるオルガネラとして分化の途上にある「ニトロプラスト※」の存在を提唱しました。

 今後は、海洋の窒素循環における全地球規模での本生物の窒素固定量の見積もりとその役割の解明、また細胞内の共生体がオルガネラ化する進化過程の理解や細胞内における「ニトロプラスト」の保持機構の解明、さらにB. bigelowiiが多産したことが知られる生物の大絶滅後(新生代初頭や漸新世)の海洋の古環境解析への貢献が期待されます。

 

※ニトロプラスト:窒素固定を行う細胞内小器官(オルガネラ)、Nitroplast(nitro-:窒素の、-plast:構造体)

 

                Science.jpg 

                Reprinted with permission from T.H. Coale et al., Science 384 (2024)

 

<論文情報>

【題名】Nitrogen-fixing organelle in a marine alga

     (海産微細藻類における窒素固定型シアノバクテリアのオルガネラ化)

【著者名】Tyler H. Coale, Valentina Loconte, Kendra A. Turk-Kubo, Bieke Vanslembrouck, Wing Kwan Esther Mak, Shunyan Cheung, Axel Ekman, Jian-Hua Chen, Kyoko Hagino, Yoshihito Takano, Tomohiro Nishimura, Masao Adachi, Mark Le Gros, Carolyn Larabell, Jonathan P. Zehr

【掲載誌】Science

【掲載日】2024年4月12日

【DOI】https://doi.org/10.1126/science.adk1075

 

プレスリリース 自然科学系農学部門の足立真佐雄教授と海洋コア国際研究所の萩野恭子客員講師らの研究グループの成果が、「Science」に掲載されました.pdf(826KB)


 

 

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