◆大学院医科学専攻2年の江川優貴さんおよび医学部微生物学講座の大畑雅典教授らの研究グループの研究成果が国際科学誌『Scientific Reports』に掲載されました

公開日 2024年6月5日

 成人T細胞白血病の治療に期待できる分子を発見

 

 大学院医科学専攻2年の江川優貴さんおよび医学部微生物学講座の大畑雅典教授らの研究グループの研究成果が、Springer Nature社が発行する国際科学誌『Scientific Reports』に掲載され、2024年5月31日に公開されました。

 成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)というウイルスの感染が原因で発症します。高知県をはじめ西日本でATL患者およびHTLV-1感染者が多いことが知られています。感染後ウイルスは排除されることなく、数十年の潜伏期間を経てATLが発症することから、HTLV-1感染細胞の免疫回避機構の存在が考えられています。HTLV-1感染細胞には制御性T細胞(※ 1)によく似た免疫抑制活性を有する細胞が存在することは知られていましたが、その詳細は不明でした。今回の研究では、同一のATL患者からCD13陽性およびCD13陰性のペアHTLV-1感染細胞株(※ 2)の樹立に成功し、その性質を詳細に解析した結果、CD13陽性HTLV-1感染細胞はより強い免疫抑制能を有することが明らかになりました。

 本研究により、CD13という分子がHTLV-1感染細胞に強い免疫抑制活性を賦与することが示されました。この結果は、CD13を標的にした治療が免疫力を回復させ、ATLの治療効果を増強させることを示唆しており、さらなる研究につながることが期待されます。

 

<論文名> Novel paired CD13-negative (MT-50.1) and CD13-positive (MT-50.4) HTLV-1-infected T-cell lines with differential regulatory T cell-like activity

<和訳>異なる制御性T細胞様活性を有するCD13陰性(MT-50.1)およびCD13陽性(MT-50.4)ペアHTLV-1感染T細胞株

 

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(※ 1)制御性T細胞??免疫抑制細胞であり、本来は自己に対する免疫応答の抑制を司っている細胞。しかし、がん細胞はこの制御性T細胞を利用して、免疫系からの攻撃を回避する。

 

(※ 2)細胞株??組織から分離した特定の細胞が、一定の性質を保ったまま、死滅することなく半永久的に安定的な増殖?培養ができる状態になった細胞のこと。疾患の研究に役立つ。

 

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