Case.09
大学4年で配属された研究室では薬用植物の成分がどのような時に作られ、どのような遺伝子が関わっているかを研究していました。卒業論文のための実験を行っているとき、ムラサキと言う植物の培養細胞内でローズマリー酸が作られるときに関わる酵素の遺伝子の断片を見つけました。その遺伝子が、どんな役割を果たしているのかを自分自身で明らかにしたいと思い、研究を続けているうちに博士課程・研究の道へと進んでいました。
私たちの身の回りの出来事は大きなジグソーパズルのようなもので、全体像はなかなか見えません。それでも自分のできる範囲で実験や観察を続けて行くと、ある日、結果と結果が意味するところがつながる瞬間があります。さらに続けていくとその周囲が全部つながって「なるほどこういうことが起きているのだ」と理解することが出来ます。このつながったときの瞬間が嬉しくって、研究を続けている原動力になっています。
世界的に医薬品や漢方薬の原料になる薬用植物が足りなくなると言われています。そこで日本国内での薬用植物の栽培が求められています。高知県立牧野植物園では高知県に適した薬用植物の選定や栽培方法を試験しています。薬用植物の栽培で難しいところは、薬用とする葉や根などの部位に含まれる成分量の基準が決まっているところです。薬用とする成分が一定の基準以上含まれていないと医薬品原料にすることが出来ません。そこで、薬用植物の栽培条件を試験しながら、成分分析などにより成分の変化も見ています。試験栽培を行っている圃場で定期的にサンプリングと分析を行った結果、シャクヤクの根の成分は季節によって変化することがわかってきました。
植物は暑さや寒さなどの温度変化や、虫や動物から身を守るための仕組みとしていろいろな化学物質を体内で作っています。私たち人間はそれらの化学物質を利用して、衣服を染めたり、痛みや熱を下げる薬を作ってきました。植物が作る化学物質の中には工場で合成することが難しいため、植物しか作れないものが多くあります。これらの化学物質が植物のどこで、どんな時に、どんなメカニズムで作られるのかを研究しています。
研究をしていると、膨大な量のデータ収集や解析など地道な作業がいっぱいあります。一見つまらないと思われる地道な作業の積み重ねがあってこそ「気づき」や「発見」につながるのです。研究はごく一部の恵まれた才能のある人たちだけが担うものではなく、研究に携わる多くの人たちの気づきや発見がつながっていろいろなことがわかってくるのです。万里の道も一歩からと言いますが、目的をよく理解して実験や観察を行っていれば、あなただけが気づく発見が目の前にあると思います。
仕事で畑に行ってサンプリングをするときは、しっかりと根を張ったシャクヤクを掘りあげたりするので、日頃の体力維持が大事だと思っています。そこで、朝や寝る前の空いた時間にストレッチ運動をしたり、週末はバドミントンをしたりして普段から体を動かすようにしています。また高知は川がとてもきれいなので夏の間はほぼ毎週のように物部川や仁淀川に行き、川遊びをしています。
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