Case.11
小学校のころから日本史や古典が好きで、歴史学者になりたいとずっと思っていました。その当時は研究者がどのような職業なのかもよく分かっていませんでしたが、自分には研究者の道しかないと思い込んでいました。その夢を実現するため、向こう見ずに大学院まで進学しました。大学院では、家族関係学・ジェンダー領域の先輩方に囲まれながら、日本の家族史・ジェンダー史・女子教育史の研究をしていました。先輩方と一緒に難しい本を読んだり、討論したりして、大変充実した日々を送ることができました。
研究の魅力は、一言でいえば「いろんな考えを知れること」でしょうか。私は、大学院まで日本を出たことがなく、これからも外国とは無縁の人生を送るだろうと思っていました。ですが、大学院生の時に台湾から来た留学生のチューターをしたことがきっかけとなり、中国語も全く話せないのにもかかわらず思い切って台湾へ留学しました。台湾留学によって様々な背景を持つ人々と出会い、交流する機会を得ました。それ以降、私はアジアの人々と積極的に交流しながら研究を行っています。アジアの研究者と学術交流を行い、そしてアジアの人々のお話に耳を傾けることで、多角的な視点を持てるようになりました。
今年4月から高知大学で働いていますが、忙しいながらも、毎日とても楽しく高知生活を送っています。スーパーに行っても、コインランドリーに行っても、路面電車に乗っても、高知の人は親しく話しかけてくださいます。なので時々、台湾の生活に戻ったような感覚になります。
研究に関しては、ここ数年は中国や台湾の子育て・家族を中心に研究を行っていますが、これからは高知の人たちがどのような生活をし、どのようなことを日々考えているのかを知りたいと思っています。特に高知の保育や少子化現象を社会学的視点で明らかにできればと思っています。それに加え、今年から外国につながりのある子どもたちとの多文化共生についての研究も始めています。
私が今行っている研究は、2つあります。1つは、中国の幼児教育についてです。現在、中国では、幼児教育教室が沢山つくられ始めています。中国の幼児教育の教室に調査に行って教室の先生やそこに通っている家族にお話しを聞いています。2つ目は、台湾の少子化研究です。現在、日本も台湾も子どもの数がとても減っています。台湾では少子化を和らげるために様々な政策を行っています。その政策について、市役所や子育てをしているお母さんにお話しを聞いています。
うまくいかないかもしれないけれども、とりあえずやってみる、経験してみることが大事ではないかなと思います。私の体験上、挑戦し続けていれば、中華圏でよく言われる「縁」がもたらされると思います。その縁は、多くの試練と共にチャンスももたらしてくれます。
また、もし機会があれば是非、日本から飛び出してみてください。日本で起きている事象を相対化する視点や、海外で適応しながら生き抜く力を養える機会となります。
私が大切にしている時間は、「人と話したり、笑ったりする時間」です。自分がこんなに人と交流するのが好きだったとは、外国で生活するまで思いもよりませんでした。日本で生活をしていた時、自分は一人でなんでもできると思い込んでいました。ですが、外国で生活すると簡単なことをするにも誰かのサポートなしにはうまくいかないことを痛感しました。ですので、誰かが自分の傍にいてくれることに感謝しながら、毎日の生活の中で、周囲の人と何気ない日常の話をしながら笑える時間を大切にしたいと思っています。
共同研究者と大連の幼稚園見学
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