Case.15
大学卒業後はずっと臨床中心で研究に携わる機会が持てずにいましたが、5年前に現在所属している教室の教授に声をかけられ出生コホート調査に携わるようになりました。
ちょうどその頃は不妊治療中で、勤務時間が長く不規則で当直も多い生活の中では治療を継続するのが困難だったため、非常勤にかわり外来診療のみにさせてもらっていた時期でした。研究を始めるのには良いタイミングだったと思います。
臨床の中で生じた疑問をもとに仮説をたて、データを解析してその答えを知るのが今はとても楽しいです。データを解析したり関連する文献を読んでいるとまた次の疑問が湧き、それが次の研究のテーマとなっていきます。ただ、私は研究者としてのキャリアがまだ浅く、研究の本当の魅力を知るのはまだまだ先かもしれません。
エコチル調査という大規模な出生コホート調査に携わりつつ、小児科医としての外来診療も行っているので、仕事では研究と臨床にちょうど半々くらいに時間を割いています。プライベートでは0歳と2歳の2人の子育て中で、仕事はほぼ定時に切り上げて帰宅しています。子供が寝た後、体力が残っていればデータをチェックしたり、論文を書いたりしています。常に時間に追われている感じですが、夫と近くに住む義両親にかなり助けられています。多くの学会で託児がついているので、県外の学会出張に子どもを連れていくこともあります。
エコチル調査では、全国約10万組の親子を対象に、お母さんが妊娠中から子供が13歳になるまで、定期的に生活習慣に関連する質問に答えてもらったり、採血・身体計測・発達検査などを受けてもらうことによって、生活環境が子供たちの健康や発達にどのような影響を与えるのかを調べています。集まったデータを解析し、いろいろな疾患と生活環境の関連性について報告しています。
30代後半で仕事をペースダウンした時は葛藤もありましたが、1回ギアチェンジしたからこそ、自分でも思ってもみなかったタイミングで研究に携わることになりました。研究の内容にもよると思いますが、私の場合は時間の融通がつきやすかったので、ここ数年の様々なライフイベントと研究の両立が何とかできています。とても「ロールモデル」と言えるような歩みではありませんが、人それぞれのペースやタイミングがあるのだと思います。
調査に協力して下さっている参加者さんはもちろんのこと、調査に携わる多職種のスタッフがいなければ研究は成り立ちません。ただ研究に没頭するのではなく、参加者さんやスタッフ、研究者同士など、関わりのある多くの人とのコミュニケーションは大切にしたいと思っています。研究は楽しく、もっと時間を割きたいという思いはありますが、子供がまだ小さく、今は子育てを楽しみながら家族ですごす時間もとても大切です。
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