Case.21
小学1年生から5年間植物採集を続けるなど、動植物と関わることが好きな子供でした。そのため「将来は研究者だね」と度々言われましたが、研究職が想像できませんでした。大学で知った研究者の仕事は、英語論文の読み書き、大人数の前での発表…私の苦手な事ばかり!と思いました。しかし全力で考えたこと、やったことが評価されるのは快感で、大学院卒業の頃には苦手だった事も多くは楽しい時間に変わっていました。
研究から少し離れて気づいた事ですが、「研究者の世界」が私はとても好きです。教授も学生も関係なく一人一人が研究者として尊重されます。私の研究分野では学生も教員を「さん」付けで呼ぶことが多いですし、教授が自身の研究について学生や若手研究者から意見をもらうこともよくあります。若手でも対等な研究者として尊重される分、責任もあるし、やった分だけ正当に評価されることが多い世界なので、やりがいのある仕事です。
現在は1歳児の子育て中心の生活です。毎月高知−宮城を往復して仕事していたので、妊娠して移動が難しくなり、無給の研究員になりました。念願の子供に幸せいっぱいな一方、妊娠中、出産後は研究職復帰への不安が募りました。そんな時、大抵1通のメールが来ます。その多くは研究相談や解析方法の相談(前職で他大学の研究者向けに新しい遺伝解析方法の講習をしていたため)、その他、投稿論文の修正や査読依頼などです。研究の事を考えはじめると不安が消え前向きになれます。その繰り返しの中で自分のやりたい事や将来像が明確になりました。育児中でもできることがあります。最近は託児もできるようになったので復帰に向けて動き始めました。
近年、数千万〜数億の遺伝子配列が一度に読める次世代シーケンサーという機械が広がり、遺伝解析の研究は大きく変わりました。この機械を使った解析方法の一つMIG-seq法は、どんな生物でも沢山の遺伝子を同時にPCR(遺伝子増幅)し、数百個体の遺伝的な違いや親子判定、過去の進化の歴史などが数日で解析できる驚きの方法です。私は合計48種類の植物、動物、微生物についてMIG-seq解析を行い、解析方法の改良を考えてきました。
理学系の研究者を目指す女子学生へ。女性に限った話ではありませんが、特に女性は研究者を目指す中で結婚や出産を考えて悩んだり、大きな決断をしなければならない時が来るかもしれません。理学系は男性が多く、悩みを共有できる人が周りにいないこともあります。難しいことですが自分の気持ちを何よりも大切に、5年先、10年先を想像してそのための挑戦を続けてください。あなたの大きな夢が現実になることを応援しています。
この1年間は子育てに加えて新型コロナウイルスの感染拡大で予定していた実験がなくなるなど、日常が大きく変わりました。最近は毎週大学へ行く日を作り、研究のことを考える自分だけの時間を大切にしています。
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