Case.24
私が勤める会社ではマダイなどの海産魚類の種苗生産を行っています。種苗生産とは、親となる魚から卵を採り、孵化させ稚魚サイズまで育て養殖業者の方に販売する、または放流する事業のことを言います。私は周りに山・川・田しかない兵庫県のド田舎で育ったため、生き物や自然が好きで海に憧れを持っていました。日々川に魚を捕まえに行っていたのを覚えています。大学の在学中に海釣りの趣味を見つけたことから海洋生物学研究室に所属し、進路を決める際に、高知県内・海・生き物・魚という条件ピッタリの今の会社を見つけ、志望しました。しかし、種苗生産や研究などの知識が一切なかったため、入社後に新たに学んだことがほとんどです。
日々育っていく小さな命を間近で観察できることです。ふ化後、数mmしかない仔魚が数ヵ月後には約10cmの稚魚となり、養殖業者さんのもとへ出荷されていきます。そして約2年後に親魚候補として成魚になった子たちが返ってくるというサイクルには感慨深いものがあります。相手が生き物なので、「こうすればこうなる」という絶対的なものが少ないことが、難しくもあり、やりがいを感じられるものでもあります。また、養殖業というのは各地で食糧難に大きく貢献する産業として認識されており、その一角を成すというところには多大な使命感があります。
養殖魚として強く求められる品質とは、高成長、高耐病性です。そういった素質をもつ「親魚」を選抜し生産に使うことで、そこから生み出される稚魚にその素質を引き継がせようとするものです。親魚には1尾ずつ個体識別を施し、また鰭の一部を採取してそこからDNAを抽出します。DNAを用いた親子鑑定によって、1個体ずつ両親や祖父母まで辿れるようデータを管理しています。外観などの表現形質(体の大きさ、体色の綺麗さ等)が優れた個体を選び、なおかつ持続的に生産を行っていくために、DNAの類似性からどれぐらい近縁かを推測し、近親交配が起こらないような雌雄の割り振りを決めています。以上により、遺伝子操作を行うことなく、安心・安全な稚魚を生産し、養殖業者の方へ持続的に提供できていくものだと考えています。
「良い親選び」です。背の高いお父さん、お母さんから生まれた子供は、生まれた時は周りと同じ大きさの赤ちゃんでも、将来両親のように背が高くなる可能性を秘めています。子供は親の素質を受け継ぎ、親と同じような姿・形に成長します。それが「遺伝」です。養殖魚には「良く成長する」「病気に強い」「姿形が綺麗」という素質(=形質)が求められ、そういった親を選ぶことで将来有望な稚魚を作り出そうという取り組みです。
何に対しても興味、探求心、向上心を持つことが大事だと思います。現状に満足してしまえばそこから先には何も進まないと思います。何かをしようとするときにはあらゆる情報を集め、その中から鋭意検討するのが大事だと日々感じます。失敗しても困難にぶち当たってもすぐに辞めようとしないで、とことん向き合って、少し休んでまた向き合って、ちょっと満足できるまで頑張るんです。そこまでいくと、多分「まだまだ物足りない」と考えが変わると思います。
もちろん仕事や家族との時間も大切ですが、何より自分が楽しめる趣味の時間を大切にしています。みんなが寝静まってから気兼ねなく漫画を読んだり映画を見たり、美味しいお酒と美味しい料理を楽しむ時間も好きです。他に、主人が忙しいときを見計らって、母子だけで旅行にいったり地元に帰省したりするのは割と日常の中でも楽しい時間です。とにかく自分が満足できることや時間を持つことが日々仕事、家事、育児に取り組む原動力になります。
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