Case.28
元々は「国連機関で働く」という、今となっては恥ずかしいくらい分不相応な夢をもっていました。そのため、大学入学前から留学の計画を立てていました。無事に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で心理学を学ぶ機会を得たのですが、多岐にわたる心理学領域に触れる中で、また世界各国からの友人と過ごす中で、改めて「人間って面白いな」と思ったことが研究の道に進むきっかけとなりました。人生の大方向転換です。
シンプルに楽しいところです。心理学は人のこころを扱う学問であるため、日常の中にあるちょっとした不思議も研究テーマになり得ます。しかし、それを科学的に実証しようと思うと、そう簡単にはいきません。共同研究者とアイデアを出し合ったり、苦労しながらデータ分析をして論文にまとめたり、時には批判もされたり。私にとっては、その全部の過程がワクワクするものです。ただし、締切に追われていなければ、の話ですが(笑)。
ひと言でいうと、「多様性に富んだ生活」でしょうか。今までは心理学者の集まりの中で生活することが多く、お互い確認し合わなくても共有している常識や前提がありました。現在の職場では、様々な分野の先生方と一緒にお仕事をさせてもらっていますが、お話を聞いていると自分が知らないことが本当にたくさんあり、新しい視点や心理学者の思考の偏りに気付かされる毎日です(笑)。また、放送大学では、隔週で一般向けのセミナーを開催しています。幅広い世代の方々とお話をする中で「社会で何が求められているのか」に気付くこともあります。研究者ではない方々の視点はとても大切で、自分の研究のヒントになることも多いです。
私は発達心理学を専門としています。発達心理学は乳幼児期から高齢期までの人生全体を扱う学問です。現在、3つの研究を同時に進めており、(1)出産を機に仕事を辞める女性と続ける女性は「自分らしさ」という点でどう異なるのか、(2)過去の辛い経験の中にどのような肯定的意味を見出すことが健康につながるのか、(3)誰かの不幸に対して感じる「様を見ろ」という感情を親友と共有したら何がおきるのか、に興味をもっています。
多忙な毎日を送っていると、研究の目的が「業績を増やすため」「良い就職先をみつけるため」といった内容にすり替わってしまうことがあります。そうすると、楽しいはずの研究が苦痛になります。これは多くの研究者が経験することではないでしょうか。そんなときは、「自分は何のために研究をしているのか」という部分に立ち戻ることが重要だと思っています。その点さえ忘れなければ、みなさんらしい研究を成し遂げることができると思います。
日常生活のリズムの中に組み込んでいる大切で楽しい時間は、職場のお昼休みのバドミントンです。負けることのほうが多いですが、勝敗に関係なく元気になれます。周囲の人と笑ってお喋りする時間もとても大切です。あとは、趣味の写真、読書、音楽・映画鑑賞、語学習得、ベランダ菜園(今年はパプリカ栽培に挑戦しました)、旅行の時間(コロナ前は砂漠に行きたくなり、ドバイを訪れました)でしょうか。たくさんあり、とても書き切れません。
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