Case.31
経済学部を卒業後海外で生活し、途上国の貧困や児童労働、障がい者差別を目のあたりにして福祉学研究の大切さを実感し、児童福祉を教えていた恩師パランジベ先生の紹介でインドへ。いざ、インドの社会課題解決へと意気込んで現地に乗り込んだが、目からうろこ!自分の未熟さにショックをうけた。インドのソーシャルワークのすばらしさに魅了され、「インドから学ぶ」をスタンスに、学生にも知って欲しくて国際協力実習科目を立ち上げた。以来、学生の引率と研究目的で年に2度はインドに出向き、様々な問題解決の選択肢を学んでいる。
インドを訪れるたびに、自分の無力さに気づき、落胆と少しの成長を重ねる。問題を抱えている人たちが、徐々に変わっていく姿を見るのが、研究をしていてよかったと思える瞬間。パランジベ先生からは「ユキはいつまでたっても素人ね、何の役にも立っていない」と言われながらも、女性や子どもたちが生き生きと自立していく姿を見ると、「これぞ真のソーシャルワーク」と感じる。しかし感情だけでは効果を上げない。他の研究を常に確認し、様々な可能な解決方法を客観的に冷静に分析できるようにいつも情熱を抑えている。
最近はインド企業の社会的責任について研究し、政府に代わって企業がいかに問題を抱えた人々の役に立っているかを研究している。以前はインドの民間NGO団体の研究が主であったが、社会情勢の急変に伴い支援方法、問題解決方法も変化している。例えば欧米には進んだシステムとしての福祉が存在し、途上国には当事者主体、住民自立など自分で権利を勝ち取る積極的福祉がある。ソーシャルワークの分野では、問題解決には常にPlanB、C、D、を持ち、正解は一つではないことを心がけ、「誰のために何のために」を常に問いかける。私の辞書には「絶対」という言葉はない。今後は民間の国際協力NGO 、その土地の内発的発展を支援するNGOの方法論を追求していきたい。
キーワードは「自分で勝ち取る」、何か変えたいと思ったら、変化は自分たちが起こせる。急変する時代に、人の支援は法律や制度ではすぐに古くなる。途上国や低開発国こそにヒントがある。人々は何にも頼らない自立したマインドで、自分たちで解決できる方法論を編み出し実践し、成功体験をいくつも持っている。「固定概念を捨て、色々試して成功体験を増やす」試行錯誤や、成功、失敗を続けて、自分のカードを増やす。例えば路上生活の子どもたちに壁新聞の発行を提案したり、学生ボランティアが事故の多い道路の交通整理に出たり、薬物被害の啓発運動を元ストリートチルドレンが実施したり、賃金を払わない雇用主に、働く子どもたち自らが交渉したり、児童労働の範囲を子どもたちの目線で決め、ルールを作り、児童労働の被害が減った。確実に変化を起こしている。皆さんもおかしいと思ったら、それを変えることができるのです。
自分が何をしている時が楽しくて、得意なことは何か追及していますか?今後どのような職業が生き残り消えていくかは未知の領域。多くの仕事はAIや機械にとってかわられます。まず自分を知って、得意なこと好きなことを見つけそれらを生かせる職業を選びましょう。この軸はぶれずに、様々な選択肢を考えて柔軟に選びましょう。そして、海外の多様な価値観を知り、導入することを恐れずに、多文化の人と話しましょう。私は落ち込んだり、自己嫌悪になったりすると、がむしゃらに研究に打ち込みます。研究と言っても大好きなインド映画(たまに韓ドラ)を見たり、英語の面白いジョークを考えたりするとストレス解消になります。そして、「私にはこれがあった」と改めて生きがいを感じます。自分の人生ですから誰も代わりに決めてくれません。うまくいかなくても他人や社会のせいにしないように、自分で決断しましょう。
締め切りの迫った論文を手を抜かずに何度も何度も読み直し、たまには踊りとユーモアいっぱいのインド映画を見ながら、息抜きをし、満足のいくものに完成させる。その時の達成感は何とも言えません。また、時々はかわいい孫と遊び、やさしさホルモンをもらい、ソフトスキルも大切にしています。子育ても研究も教育も、相手を尊重し、だめと言わない、制限しない。やりたいことは応援し、その人らしさを伸ばせるようにしたい。日本は選択肢が多い社会で、可能性は大きい。それを忘れないようにしたい。
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