Case.33
まず、アンリ・デュナンという人をご存知でしょうか?赤十字の創設者で、第1回ノーベル平和賞を受賞した偉人です。私は、小学校の国語の教科書で知った彼の生き方に感銘を受け、将来は医療に関係する仕事がしたいと思いました。大学の専攻は薬学なので、友人の多くは薬剤師として病院で働いています。ただ、私は、実習や卒業研究を通じて感じた『研究(実験)がとにかく好き』という気持ちから、薬剤師としてではなく研究者として医療の分野に貢献したいと考えました。
私にとって研究の魅力は、湧き出してくる生物学的な疑問に対して、証明や解析方法を考え、自らの手で実験し、論理的に答えを導いていくという過程すべてを楽しく感じられることです。そして、その過程の先にある、世界中の誰も知らないこと・疑問に思われていることを明らかにして、世界に向けて誰よりも早く発信できることも大きな魅力だと思います。
子供と一緒に泣いたり笑ったりした子育てもようやく一段落し、研究を続けられることに幸せを感じています。ただ、出産後に8年間専業主婦をしていたこともあり、任期付きのポジションしか研究できる場を見つけることは難しいのが現状で、高知工科大学でも3年の任期があります。もっと勉強したいと思って親には内緒で大学院に進学した時、手作りのおやつを毎日作ってあげられるような子育てがしたいと思った時、単身赴任でも高知で研究をやりたいと思った時も、世間の常識と自分が本当にやりたいことを比べて、心がワクワクする方を選択してきました。年齢を経てきて、研究で次のポジションを得ることは難しくなってきますが、10歳の頃の志を大切に、もう少しチャレンジしてみたいと思っています。
私たちの体は数十兆個の細胞からできています。そして、それぞれの細胞に全く同じ配列のDNAを配するために、細胞分裂の際、“DNA複製”と言うメカニズムが働いています。私は、親細胞のDNAを完全コピーするための“DNA複製”をテーマとして研究を行っています。“DNA複製”は、生命の根幹を成すメカニズムです。この機構の破綻は、癌や老化など生命を脅かす原因となることから、“DNA複製”の詳しい解析は、創薬や治療などに結びつくと考えています。
女性が結婚や出産を経てもキャリアを継続させることは大切なことだと思います。ただ、人生は思ったように進むことは稀で、時にはキャリアが途切れてしまうこともあります。出産・育児は、女性にとって心身とも負担がかかり、人生の大きな転換期になります。育児をきちんとしてからキャリアを再開することも選択肢の一つだと思います。このような選択肢はまだまだ認められているとは言い難いのですが、女性の働き方のロールモデルの一例となれるように私も努力します。
一番は、生物に対している時間(研究室での研究活動)です。もう一つは、趣味と実益を兼ねた料理をする時間です。高知では、新鮮で美味しい食材が安価で手に入ります。季節ごとにスーパーに並ぶ都会では手に入らないような食材を見つけては、調理法を考えるのも楽しい時間です。家には電子レンジを置いていません。時短ではなく、子育てに手を取られていた時には難しかった”丁寧に暮らすこと”を大切にしています。
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