Case.36
きっかけは卒業論文の作成でした。卒業論文では高知の中心商店街を対象に、土地利用調査やアンケート調査を行いました。野外調査をして、データを分析し、それを論文とプレゼンにまとめるというこの経験がとても面白く、「これをもっと続けたい」と思いました。また当時は、「商業環境と消費者行動が都市においてどのように変化していくのかをもっと研究したい」とも考え大学院へと進学し、紆余曲折を得て、現在に至ります。
国内外の様々な地域へフィールドワークに出かけ、見聞を広めていくところが野外科学としての地理の魅力の一つですし、さまざまな事象を地図化するのも面白いところだと思っています。また、地域の人との対話や研究者との議論、論文の執筆を通じて、自分自身の認識や考え方がひっくり返るところに研究の魅力を感じます。「そういうことか!」と新たな見方や価値観、認識を獲得していくプロセスによって、自分自身がアップデートされているように思うのです。
普段は大学にいるんですが、時にジオパークの現地審査員として、国内外のジオパークの審査や調査に出かけます。2023年に訪れた興義や恩施(中国)では、ペルム期の大量絶滅を生き延びた爬虫類たちの進化やカルスト地域における少数民族の暮らしを学びました。もちろん帰ってきたら、審査レポートの執筆です。責任感と緊張感を感じながら、学術論文を書くのとはまた違った感覚で取り組んでいます。このジオパークの審査や調査から得られた情報やインスピレーションが、自分自身の研究や活動にも役立っています。
ジオパークでは地質遺産、自然遺産、文化遺産の保全、調査・研究、教育、持続可能な開発を実践します。その中で、私は地域のさまざまな変化を調べています。例えば、レスボス島(ギリシャ)では、ジオパークの拠点施設である博物館で地元の若者を対象とした職業訓練が行われ、化石のコンサベーター等の雇用を創出しました。隠岐(島根)では観光協会が統合され、ジオパークを中心としたDMO(観光まちづくり法人)が設立されました。フィールドに出るとその変化や影響を、より詳細に観察することができます。
私自身のキャリアを振り返ると、大学院(つくば)を出たあと、地域シンクタンクの研究員(鳥取)→大学教員(鳥取)→ジオパークの専門員(伊豆半島)→大学教員(酒田)を経て、今、高知大学に勤めています。このキャリアは当初思い描いていたものではないのですが、ジオパークをライフワークにしたら結果的にこうなりました。なので、自分自身の研究と選択を信じて、キャリアを開拓していってください。
研究等でフィールドに出る分、ここ数年、インドアの編み物が日課です。主に輪針で靴下を編んでいます。無心にメリヤス編みをしている時は、瞑想状態にあるのではないかと思います。毎日小一時間ほど編むと、頭がスッキリします。また、編み物は編むだけでなく、毛糸の産地や歴史、流通、編み物文化などにも触れることができるので、地理の勉強にもなります。ただ、高知の冬は比較的暖かいので、ニットの出番が少ないのが難点です。
|
|
|
|
|
|
|
|
|