Case.37
大学での教育に携わるようになった経緯と、研究に携わるようになった経緯は、少し違うのですが、前者については、もともと、教員という職への関心は強くありました。大学では教育学部に進学したのですが、そこで、強く惹かれる講義に出会い、「この先生のもとで学びたい」と思ったことが、今思えば、この職を志した一番のきっかけだったと思います。
後者については、とても素朴な回答になりますが、「なぜだろう」と思うことがあり、それを問い続けたかったからです。
自分が疑問に思ったことを、学術的な問いにし、調査・分析・考察を重ね、一定の結論を出す、これが研究のプロセスですが、納得の行く結論を導けた時はやっぱり嬉しいです。さらに、その過程で様々な人から意見を得たり、成果を発表する事でリアクションを頂ける、そうした「問い」を通じた交流がこの仕事の本質であり、魅力と思うところです。
現在は、高知大学での教育と研究を中心に日々を過ごしています。教育については、専門である教育制度、教育行政学の講義を担当し、「ある教育制度が、なぜ作られ、どのように運用されているのか」という観点から話をしています。子どもの教育・学習環境、教員の労働環境、教育制度・行政はそれらを適切に整備する役割があり、その大切さを伝えられる授業を目指しています。また、卒業論文の指導では、ゼミ生それぞれが持っている問題意識を、論理的思考に基づいて学問的な問いへと深化させられるように丁寧に議論を重ね、また、「書く」という思考表現作業が卒業後にもつながる経験になるように、という想いで、指導しています。
研究については、空き時間に論文を読んだり、学内業務のない日程を見計らって調査にいったり、時には徹夜で論文を書いたり、多少苦しくても時間を確保するよう心がけています。
私の専門は教育行政学ですが、なかでも高校教育制度に関わる地方教育行政の態様に関心があります。そのなかで、現在は、大きく2つの研究に取り組んでいます。1つは、高校段階における男女共学・別学の状況について。もう1つは、高校と地域の協働、高校を核とした地域づくりについてです。高知県では特に後者が現実課題となっていますので、ここでは後者に言及させて頂くと、人口減少、及び少子化が進行する状況下で、地域の存続・活性化を担う存在として高校をまなざす向き(政策・研究動向)があります。そのなかで、特定の高校が、なぜ、どのように地域と結びつけられていくのか、そこで起きうる葛藤や必要な対応、教育の在り方とはどのようなものか、という点に関心をもち、調査・研究を行っています。
研究に携わる仕事を「目指している」という方は、問い続けたい疑問がすでに何かしらあるという方かと思っています。私はそれを研究として昇華するにあたって、いくつもの壁に突き当たったり、その壁の登り方がわからず悩んだ時間がたくさんありました。それでも、今できることを少しずつ積み重ねた先に、何らか結果はあらわれる、と、私は実感として思いました。成果の裏には、とても地道な作業と長い熟考の時間が必要で、それ自体を諦めないことが結果に結びつくのではないかと思っています。
友人と話す時間は、私にとってとても貴重な時間です。自分がどんな人間で、どう歩んできたか、どんなことをなぜ考えているのか、気づかせてくれたり、ある時には、足踏みしていることの背中を押してくれるような、そんな友人の存在を本当にありがたいと思っています。また、応援してくれている地元の家族と過ごす年末年始の時間など「節目」の時間も、とても大切に思っています。
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