微生物学講座は、ヒト腫瘍ウイルスの発癌機構と病態の解明およびヒトの微生物叢に関する研究を主要研究テーマとしている。また感染症分野の研究にとどまらず、腫瘍学?血液学の研究も幅広く行なっている。病原微生物学、腫瘍学(特に腫瘍ウイルス学、血液腫瘍学)を学んでみたい諸君の参加を期待している。
【ウイルスと発癌】
ヒトの癌全体の約15%はウイルスが原因となっている。Epstein-Barrウイルス(EBV)による種々の悪性リンパ腫や胃癌、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)による成人T細胞白血病(ATL)、C型肝炎ウイルス(HCV)による肝癌、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸癌?中咽頭癌などはその代表である。さらに2008年にはヒトに癌を惹起する第7番目の腫瘍ウイルスとしてメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が報告された。当分野では、主にEBV、HPV、MCPyV発癌機序?病態解明について、基礎?臨床の両面から研究を行っている。腫瘍ウイルスはいずれも持続感染し、感染後長い年月を経て、細胞遺伝子異常との共同作用の結果として癌を発症せしめる。ウイルスという外因要因を基盤に発症するいわゆる「感染癌」において、ウイルス側因子が宿主細胞の癌化を促進する分子機構の解析を行っている。
【ヒト微生物叢に関する研究】
人体の外部環境に接するあらゆる部分に様々な微生物が共生している。この微生物叢(マイクロバイオーム)の多様性とバランスは、健康と密接に関与することから注目を集めている。これまでの研究は腸内フローラに然り細菌叢に焦点を置くことが多く、ウイルス叢について不明な点が多い。常に外部環境に晒される皮膚では、腸内よりも相対的に多量なウイルスの存在が報告されていることから、その役割の大きさが示唆される。当講座では主に皮膚ウイルス叢の実態解明と皮膚疾患との関連性について追求している。
【造血器腫瘍に関する研究】
慢性炎症を基盤に発症するリンパ腫や高悪性度リンパ腫を中心に、それらの遺伝子発現解析により新たな治療標的分子の探索を行っている。