研究室紹介
医師は人の健康と生死に幅広く関わる専門職業人である。人は誰もその生涯において、それぞれ程度の差はあるにせよ、健康を害し医療を必要とすることが多いが、概して健康な生涯を完結する人達も少なくはない。しかしながら、死だけは全ての人に等しく訪れる。人の死亡は単にその人の戸籍を抹消するというだけではなく、相続、保険、裁判など様々な社会的事象が人の死に伴って発生し、親族その他死者の生前の関係者に影響する。そのような人の死亡に際して、医師だけが死亡診断書あるいは死体検案書の作成をし、人の死亡の証明をなす権限を有している。死亡診断書は医療の最終局面において作成される書類であり、死体検案書はそれ以外の場面で発生した人の死に対して作成される書類である。医療の最終局面としての死については、通常の診療の延長線上において行われる死亡の診断で事足りるが、それ以外の場面で発生した死亡に対しては「死体を検案する」という専門的対応が医師に要求される。法医学ではそのような専門的対応に必要となる知識を学ぶ。
法医学はその知識を人の死をめぐる検案や鑑定に応用する実学である。従って、研究の目的は、その成果を実践的法医診断および鑑定の精度の向上に反映させることにある。法医診断や鑑定を実践する過程において遭遇する様々な未解明課題が研究課題となる。人体に関する法病理学領域の研究、中毒学領域に関する研究、個人識別領域に関する研究が主要な研究領域である。