各科の一般的、先進的な治療?手術など
臨床研究
診療科(部)名 | 歯科口腔外科 |
手術?治療名 | 口腔がんにおける赤外線カメラシステムを用いたセンチネルリンパ節同定法の開発 |
対象となるがん病名 | 口腔がん |
■ 概要
口腔がんの治療がうまくいくかどうかは、原発巣(口の中の病巣)の制御だけではなく首のリンパ節や肺などの他の臓器への転移をいかに制御するかに係っています。したがって、転移があるかないかを正確に診断することは治療を行う上で非常に重要です。現在のところ、転移の診断は画像検査や超音波検査により行っていますが、これらより必ず正しい診断が得られるとは限りません。そこで、各がん細胞における遺伝子の異常を解析し、首のリンパ節への転移の有無と関連のあるものを見つけ出し、転移の診断の精度を上げ、適切な治療法を決定しようとするものです。
■ 研究目的
口腔扁平上皮がんにおいて、首のリンパ節への転移があるか否かを正しく診断することのできる遺伝子を同定することが本研究の目的です。リンパ節転移の有無によって治療方針は異なってきますので、最終的な目的はそれぞれの患者様において最も適切な治療法を提供することです。
■ 研究方法
治療の前には病変部の組織の一部を切除して病理組織学的診断をおこないますが、切除した組織の一部を検体として頂きます。そして、その検体から遺伝子を取り出して解析を行い、口腔扁平上皮がんのリンパ節転移の有無を正確に診断できる遺伝子を探し出します。この研究は数多くの症例のデーターを蓄積する必要がありますので、愛媛大学医学部歯科口腔外科が中心となって多施設で行っています。
■ 予測される成果
画像検査や超音波検査ではリンパ節転移は無いと診断されたものの、その後リンパ節転移が明らかになる症例がしばしば経験されます。そのような症例では、その間に他のリンパ節や臓器に転移を来たすこともあります。そのために、予防的に(転移の確証が無くても念のために)手術をしたり、放射線を当てたり、抗がん剤を投与したりすることがありますが、それらに治療により機能障害や副作用が出てきます。リンパ節転移の有無を正確に診断できる遺伝子が見つかれば、早くにリンパ節転移に対する治療を行なうことが可能となり、他のリンパ節や臓器への転移を防ぐことが出来るようになります。さらに、不必要な治療を行なうことを無くすこととなり、患者様の苦痛を軽減することが出来ます。
診療科(部)名 | 歯科口腔外科 |
手術?治療名 | 口腔がんの頚部リンパ節微小転移診断マーカーの同定 |
対象となるがん病名 | 口腔がん |
■ 研究の意義および目的
口腔がんにおいて頸部リンパ節転移は約4割に認められますが、約1割は治療前のPET-CT?CT?MRI?超音波検査などでは「転移無し」と診断されたものの(実際は微小な転移があるが、検査で検出できない)、治療後半年~1年してリンパ節が大きくなり転移が判明します(後発リンパ節転移という)。このような症例では、その間に肺や肝臓などの遠隔臓器に転移を来たして致命的となることがあり、微小転移を早く見つけて治療することが非常に重要です。これまでは、リンパ節転移が疑わしい場合には念のために頸部のリンパ節を手術すること(予防的頸部郭清という)が行われてきましたが、結果的には転移が無く、不必要な手術であったこともありました。そこで、不必要な手術とならないように、口腔がんが最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節)を見つけて、そのリンパ節に転移があるかどうかによって、頸部のリンパ節の手術が必要かどうかを判定するということを行っています。
■ 研究の方法
画像検査で明らかなリンパ節転移は無いと判断された症例において、以前より肝機能検査に使用されているインドシアニングリーン(ICG)という色素を口の中のがんの周囲に直接注射するか、あるいは、抗がん剤投与のためのカテーテル(管)が挿入されている場合はカテーテルを通じて投与します。その後、頸部に小さな切開を加え、赤外線カメラシステムを用いてセンチネルリンパ節を見つけ、病理組織検査を行います。その結果、転移が見つかれば通常の頸部リンパ節の手術(頸部郭清)を行います。転移が無ければ、切開を加えたところを縫合するだけで、頸部郭清は行いません。
■ 予測される研究の結果
予防的な頸部郭清をしなくて済むようになり、頸部郭清による障害(肩の下垂、腕の挙上障害、頸部痛など)を回避することができます。