概要◆生命システムを制御する生体膜機能拠点◆Center of Biomembrane Functions Controlling Biological Systems
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概要
研究組織
期待される成果
メンバー紹介
講師:順天堂大学大学院医学研究科環境医学研究所・医療看護研究科 感染制御看護学分野 教授
   岩渕 和久 先生
演題:糖脂質に富む膜マイクロドメインの構造と機能について
日時:平成26年10月27日(月) 17:00-19:00
場所:高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 スフィンゴ糖脂質(GSL)は、細胞膜上で互いにcis相互作用することで会合する性質があり、脂質マイクロドメイン(脂質ラフトとも呼ばれる)を細胞膜上に形成する。また、飽和なアルキル鎖で構成されているグリセロ糖脂質やGPIアンカー型タンパク質も脂質構造の特徴から脂質マイクロドメインを細胞膜上に形成する。これらの脂質マイクロドメインは、Src family kinaseのような膜に会合する細胞内情報伝達分子や、成長因子受容体・インテグリン分子等がドメインに離合集散することで、生物機能の発現や調節に関与することが示唆されている。しかしながら、これらの脂質マイクロドメインを介した細胞機能の発現・調節機構の詳細は未だに不明な点が多い。ヒト好中球の細胞膜上にはSrc family kinaseであるLynと会合したラクトシルセラミド(LacCer)の膜マイクロドメインがあり、好中球の遊走・貪食・活性酸素産生を仲介する。この情報伝達には、炭素数24(C24)の極長鎖脂肪酸鎖をもつC24-LacCerがLynと会合することが必須となっている。一方で、グリセロ糖脂質であるホスファチジルグルコシド(PtdGlc)も好中球に特異的に発現し、LacCerとは異なる膜マイクロドメインを細胞膜上に形成し、Fas分子と会合することで好中球にアポトーシスを誘導する。これらのことは、細胞には糖鎖と脂質のプログラムされた発現制御機構が存在し、糖鎖や脂肪酸鎖の構造の違いに基づいた異なる機能ドメインが同一の細胞膜上に形成されていることを示している。
 このセミナーでは、糖脂質の性質の違いが膜マイクロドメインの構造と機能にどのように関わっているかについてこれまでに明らかとなっていることについて紹介したい。


講師:香川大学医学部 生体分子医学講座(生化学)教授
   上田 夏生 先生
演題:内因性マリファナ様物質(エンドカンナビノイド)と関連脂質分子の代謝と生理機能
日時:平成26年2月21日(金) 17:00-18:30
場所:高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 ヒトが大麻(マリファナ)を摂取すると、陶酔感、時間・空間感覚の喪失、幻覚、眠気、口渇などの症状が生じるが、それは大麻に含まれるカンナビノイドが脳などでG蛋白質共役型のカンナビノイド受容体と結合するからである。この受容体の内在性リガンドは「エンドカンナビノイド」と呼ばれ、その本体はアラキドノイルエタノールアミド(アナンダミド)や2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)のようなアラキドン酸誘導体であり、生体膜のリン脂質から酵素的に作られる。このうち2-AGは、シナプスの逆行性シグナル分子として重要な生理作用を担っていることが明らかになっている。一方、アナンダミドと類似の構造を持つパルミチン酸やオレイン酸のエタノールアミドも体内に存在し、カンナビノイド受容体とは結合しないが、核内受容体PPARαなどと結合し、抗炎症・鎮痛・食欲抑制などの作用を示す。種々の脂肪酸のエタノールアミドは共通の代謝経路で生成すると考えられ、微量しか存在しないアナンダミドは、この経路の副産物の可能性がある。本セミナーではエンドカンナビノイドの作用を解説するとともに、脂肪酸エタノールアミドの代謝に関する我々の酵素学的知見を紹介する。


講師: 高知大学医学部附属先端医療学推進センター 特任教授
    横浜市立大学大学院医学研究科 客員教授
    城武 昇一 先生
演題: 細胞に親しい高分子構造体を創って様相を診ると・・・
日時: 平成25年5月15日(水) 17:00-18:30
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 細胞と親しい人工構造体のモノづくりを通して、細胞の生活環境と代謝制御の仕組みの大切さ、人間の安心安全と生活環境、自然と人間生活との整備、それらに相応しいイノベーションを高い信頼性が要求される新産業に適用、また、超微小な技術が大きなイノベーションへと連なって農学・工学・医学・薬学などの専門技術・農工医薬連携が人間を始め生物に優しい社会環境へ対応していることについて紹介し、最後に、高知大学の若い研究者や学生諸君へのメッセージにて、モノづくりへの思いを伝えたい。
 本研究の起源は、がん化学療法に執念を燃やした若い血潮が「耐性化と副作用の狭間」の治療限界に突き当たり、患者と共に深く悩み長く苦しみ、医学研究に人生を奉げた自分の夢を儚み過ごしていた時に、ふと生まれた「細胞と親しい仲間創り」の奇想天外な発想であった。
 高知大学と、現在、「予防農法の確立」に向け探索を進め、今後、構造体基盤の強化、食物アレルギーの予防と治療、難治性感染症予防対策、がん転移予防医学に、夢ある研究者との幅広い連携をもとに、世界を変える「いごっそう」仲間を募りたい。


講師: 関西医科大学解剖学第一講座 助教
    平原 幸恵 先生
演題: 脱髄変性ラットにおける膜型エストロゲン受容体GPR30を介した再ミエリン化促進作用
日時: 平成25年3月26日(火) 17:00-19:00
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 エストロゲンに神経保護の働きがあることが注目されてきている。特に、女性に多発する多発性硬化症への臨床応用にエストロゲンが試行されている。中枢神経系において、有髄神経の生存維持はミエリン形成細胞オリゴデンドロサイト(OL細胞)に依存しており、 迅速なミエリン再形成は、脱髄を伴う神経変性から軸索を保護する。このような重要な役割が示されているにも関わらず、OL細胞の神経保護のメカニズム、とりわけ、エストロゲン作用の分子メカニズムは不明である。最近、Gタンパク質共役受容体GPR30が膜型エストロゲン受容体であると報告された。本研究では、GPR30に焦点をおき、OL細胞での局在、脱髄変性緩和作用への影響を解析した。免疫組織学的解析により、ラット脳梁および脊髄の白質のOL細胞が、GPR30を発現していることが明らかとなった。また、脳由来、脊髄のOL細胞初代培養において、GPR30がOL細胞前駆細胞からOL成熟過程を通して細胞体に強く発現していた。その生理機能を明らかにするために、クプリゾン投与による脱髄-再ミエリン化モデルラットを作成し、GPR30特異的アゴニストG1の投与がミエリン形成に与える影響を解析した。その結果、G1投与群の脳梁において、OL成熟が促進していた。また、後根神経節とOL前駆細胞の共培養系において、G1は、ミエリン形成促進作用を示した。エストロゲンがGPR30を介し、OL細胞の成熟誘導・ミエリン形成に働き、神経保護に効果的な役割を果たしていると考えられる。


講師: 北爪 美和子 博士
    トミーデジタルバイオロジー社
演題: 1分子リアルタイムシーケンサー PacBio RSの紹介
日時: 平成25年3月26日(火) 16:30-
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 次世代シーケンサーは、その登場から7年が経過し、幅広い研究者に認知される解析装置の一つとなりました。$1,000ゲノム構想の下、米国を中心として非常に多くのベンチャー企業や研究組織が新しいシーケンシング技術の開発競争を繰り広げております。そのような中、2011年4月27日に米国Pacific Biosciences社が従来の次世代シーケンサーとは全く異なる新しい技術を用いた第三世代シーケンサーPacBio RSを発表しました。2011年末からは日本での導入も開始され、従来の次世代シーケンサーと共存しながら活用されることが期待されています。
 本セミナーではまず始めに、PacBio RSの原理についてご説明します。PacBio RSシーケンサーでは、従来の次世代シーケンサーとは異なり、(1) 1分子リアルタイムシーケンシングによるDNA合成と検出の同時実行、(2) これまでの記録をはるかに上回る“超ロングリード”の実現、(3) PCRによる増幅過程が不要、(4) GC含有量に関わらない均一なシーケンス結果の取得、(5) DNAのメチル化といったエピジェネティクス研究における広汎な塩基修飾の検出、を実現しました。また、PacBio RSにおけるワークフローおよび実際の応用例についてもご紹介させていただきます。これを機会に、PacBio RSシーケンサーのご利用をご検討頂くと共に、皆様のご研究の発展に貢献できましたら幸甚です。


講師: 高知大学医学部附属先端医療学推進センター特任助教(テニュア・トラック教員)
    太田 信哉 先生
演題: プロテオミクスを用いた分裂期染色体構造の解析
日時: 平成24年6月13日(水) 17:00-18:30
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 My studies presently aim to answer : What are the structural proteins of the mitotic chromosome and how do they direct chromosome segregation in mitosis? Currently, we have identified ~4,000 polypeptides in highly purified chicken mitotic chromosomes by using a mass-spectrometry based proteomic analysis. This seminar is going to focus on a novel approach that we term Multi-Classifier Combinatorial Proteomics, to sort through this massive proteomic data set and integrate multiple classifiers by machine learning uncovered functional relationships between protein complexes in the context of intact chromosomes.

 このたび、高知大学医学部最初のテニュア・トラック教員として、先端医療学推進センターに太田信哉先生が着任いたしました。 太田先生のこれまでの研究業績と今後の抱負について紹介していただきます。


講師: 東京都医学総合研究所 細胞膜研究室
    笠原 浩二 先生
演題: フィブリンの血小板膜ラフト移行と血餅退縮における働き
日時: 平成24年3月16日(金) 17:00-18:30
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 ラフトはスフィンゴ脂質とコレステロールに富む細胞膜のミクロドメインである。様々な機能タンパク質を集積させることにより、膜を介するシグナル伝達や細胞接着の中継点として働いている。 血管が傷つくと血液凝固反応が開始され、フィブリノーゲンがトロンビンによる切断でフィブリンに変わりフィブリンの網が血栓として傷口を固める。また、血液が凝固したのちにフィブリン網と血小板からなる凝血塊が収縮する血餅退縮という現象が知られ、形成した血栓を強固にして止血を完全にする働きをしている。血小板膜のフィブリン受容体GPIIb/IIIa(インテグリンαIIbβ3)の細胞質側にミオシンが結合し、アクトミオシン系の収縮によりフィブリン線維を引っ張ることでおこると考えられている。私たちは血小板をトロンビンにより活性化すると、フィブリンおよびミオシンがラフト画分に移行することを見出した。また血小板を免疫染色すると、血小板膜の全体ではなく限局した領域にフィブリン、活性化ミオシン、スフィンゴ脂質が共局在することがわかった。このことから、外側のフィブリン線維と内側のアクトミオシン系が血小板膜のラフトを介して効率よく連結し、血餅退縮に必要な張力を生み出している可能性が考えられた。      


講師: 中部大学生命健康科学部・生命医科学科 教授
    田口 良 先生
演題: リピドミクスにおける各種解析法とその生命科学研究への適用
日時: 平成24年3月2日(金) 17:00-18:30
場所: 高知大学医学部 臨床講義棟1階 第2講義室


 リピドミクスをはじめとするメタボローム解析の特徴は、生理的、病理的環境などの異なった系における多数の構成分子を包括的に分析し、そのプロファイルを比較することにより、最もその現象と関連する可能性の高い因子群を探り出すという点にある。現在我々が研究対象としている脂質はソフトイオン化質量分析の発展により、その詳細な分子種の存在が明らかにされ、それらが生理的病理的に異なる役割を担っていることが判ってきた。我々は脂質メタボロミクス解析を基盤に、脂質代謝異常症、炎症などをモデルとして、脂質代謝分子のプロファイルの変動の包括的な解析、特に高度不飽和脂肪酸含有脂質とその酸化物の機能と病態への関与の解明等を主たるテーマとして研究を進めてきた。  
 このセミナーでは、リピドミクスで用いられる主要な解析手法について解説し、我々の研究を例に、生命科学研究や創薬開発等にリピドミクス手法を適用する際の考え方等について解説する。また、最近、我々が取り組んでいる溶媒抽出表面分析法という組織局所における脂質分子種の直接解析法についても触れたい。     


講師: 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子病態学分野 教授
    佐々木 卓也 先生
演題: 細胞内ロジスティクスから神経や上皮細胞の形作りの分子機構を探る
日時: 平成24年2月17日(金) 17:00-18:30
場所: 高知大学医学部 大学院棟1階 セミナー室


 神経系や免疫系などの高次機能システムを構築し、その複雑な機能を発現・維持していくためには、各々の系を構成する細胞群のダイナミックな形態変化が必要となってくる。この形態変化においては、機能分子群が正しい時に正しい場所に運ばれる必要がありその輸送の制御機構、つまりは細胞内ロジスティクスの本体を解明することは、高次機能システムの破綻に基づく疾患の病態を考える上でも不可欠である。私共の研究室では、様々な高次機能システムの基盤となる上皮組織の構築や高度な神経機能の基盤となる神経回路網形成における細胞内ロジスティクスに注目し、これまでにRab13低分子量G蛋白質とその標的蛋白質JRABが、上皮細胞の細胞間接着や神経細胞の突起形成において重要な役割を担っている可能性を提示してきた。これらの過程で引き起こされる細胞骨格の再編成は、機能分子群の輸送と密接にリンクしており、上皮細胞と神経細胞において見られる普遍的なメカニズムと考えられる。今回の大学院DCセミナーでは、そのリンク機構におけるRab13-JRAB系の役割と作用機構について、これまでの成果をお話したい。     


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