プロジェクト概要
現在,地球上の環境は,オゾン層破壊,温暖化,土壌の酸性化?砂漠化や汚染,熱帯林消滅,海洋汚染,野生生物の減少などさまざまな問題を抱えています.人類は,環境にインパクトを与えることなく「生きる」ことはできませんが,今後は,持続可能な地球上の環境を創出し,それと共生していくために,低炭素社会,循環型社会,自然共生社会,快適生活環境社会を実現させていく必要があります.これらの社会は,植物の健全な生育なしには実現不可能と言っても過言ではありません.すなわち,温室効果ガスであるCO2を吸収する植物を育成することは,「低炭素社会」の具現化に直結しています.さらに,植物を,そのライフサイクルの全ステージにおいて健全に生育させることは,安全な食料生産を通じた「快適生活環境社会」の構築,植物機能及び生産物?残さの高度利用による「循環型社会」への貢献,さらには,地域社会の活性化を通じた健全な生活環境の構築による「自然共生社会」の実現につながると考えられます.また,地球的規模でみると,生産可能な食料の約三分の一,8億人分の食料が毎年植物の病気により失われていると言われており,食料の量的確保の面からも,植物の健全な生育環境の構築,病害虫の予防?診断?治療が不可欠です.
一方,高知県は,ナス,シシトウ,ミョウガ,ピーマン,キュウリ等の施設野菜収穫量が,常に全国でも上位にあり,日本各地へ安全な野菜を供給する基地として重要な責務を負っています.また,環境保全型農業の先進地域として,東?東南アジア諸国での資源循環型持続的農業の普及において先導的役割を果たしています.このような状況のなかで, 188足球直播_篮球比分¥体育官网は,地域基盤型大学として,地域を通じた世界レベルの研究を展開するとともに,新たな人材を育成し,研究成果を地域へフィードバックしていく必要があります.
本プロジェクトでは,特に高知県の特産作物を主な対象として,「発芽?生育?開花?結実(生産物)?枯死(残さ)という植物のライフサイクルのすべてのステージにおいて健全性を実現させ,同時に,植物の有する様々な機能や生産物?残さを高度利用できるようにすることが,人間にとっても健全な生存環境を創り出す」という理念のもとに,「植物健康基礎医学」研究拠点を形成し,一連の研究を展開します.「植物健康基礎医学」が,広い意味での植物科学をカバーするものであることは言うまでもありません.しかし,本研究拠点では,病原性微生物に感染した植物の臨床的治療ばかりでなく,植物の様々な病害をこれまで以上に安全?安心な手法で総合的に予防?診断することに重点を置き,生産物?植物残さの高付加価値化?高度利用までをも研究テーマとして取り上げるところに特色があります.
本研究拠点は,「地上部環境の改善」,「根圏環境の改善」,「生産物?残さの高度利用,高付加価値化」の3つの研究領域から構成されます.「地上部環境」領域は,「病害」と「虫害」の各ユニットに区分し,地上部での感染?発生が問題となる病害?虫害を扱います.また,「根圏環境」領域では,土壌病害,栄養障害,物質の吸収と転流等を取りあげます.さらに,6年間の本プロジェクトの最終的な目標として,植物病に関する基礎的研究の推進,現場レベルでの病害予防?診断?治療,植物機能?生産物の高度利用法の技術移転に貢献するNPO法人として「植物健康基礎医学研究センター」の設立を目指します.