環食同源プロジェクト
-環境保全型高付加価値食料生産システムの構築を目指して-
近年,わが国では食の安全性や環境の保全に大きな注目が集まっています.しかしその一方で,我々の生命を支える多くの食料生産が東南アジアで環境を破壊し,安全性に疑問のある農薬や抗生物質に支えられて生産されたものが輸入されているのも事実です.
食料は,地球環境を維持する物質循環システムの原動力になっていくことが求められます.しかし,食料生産のグローバル化によって生じた生産地と消費地の間の距離的乖離,生産と消費の時間的なギャップが,理想的な物質循環を破綻させ,さまざまな元素の地球規模における局在化に拍車を掛けているといえます.
この歪みを解消して,すべての物質循環を理想の方向に戻していくためには,生産地と消費地の距離的乖離を限りなくゼロにしていく方策が最も有効でしょう.この方策は「地産地消」の運動に通底するものです.しかし,われわれは,大学を中心とした研究において,「地」の規模を固定的に定義することは得策ではないと考えます.すなわち,各研究者がまず独自に「地」域を規定し,そのフィールドでの物質循環を常に念頭に置いた研究を展開することを目指しました.
人間を含むすべての生物にとって,食料と環境は健全なライフサイクルを維持するために不可欠な要素です.安全な食料を生産することが,同時に健全な環境を創り出すことにつながらなければ,永続的に地球環境全体を維持していくことは不可能でしょう.
「環食同源」プロジェクト研究では,環境の維持?修復と,健全で高い付加価値を有する食料生産の両立を体系的な学問分野として捉えます.そして,「環食同源」という新しい概念に基づいた環境保全型食料生産システムの構築を目指します.さらに構築した環境保全型食糧生産システムを持続的に実施するために,食と環境を中心とした環食教育の体系化を目指します.