研究紹介Research
腎臓?膠原病グループ
我々の研究グループでは、腎疾患の基礎?臨床研究と膠原病?自己免疫疾患の臨床研究を主体に行っております。
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基礎研究
急性腎傷害、慢性腎障害の分子生物学的解明と、腎傷害及び尿細管再生時に働く分子を利用した新規治療法と診断法についての研究
1)繊維化抑制による急性腎障害から慢性腎臓病へ進行防止の検討
-新規サイトカインIL-36と繊維化抑制に着目した新たな治療と診断法の開発-
現在、透析療法に至っている患者数は、全国で33万人を越え、特に急性腎障害(AKI:acute kidney injury)は、患者の高齢化などにより発症頻度は高まり、腎?生命予後を低下させることが報告されてきており、その対策が急務です。本研究は、IL-36によるAKIからCKD移行への関与とそのメカニズムとして繊維化を検討しています。IL-36によるAKIからCKD移行のメカニズムを実験動物と臨床検体を用いて解明し、IL-36受容体抑制系の蛋白や抗体による新規治療法ならびに早期バイオマーカーとしての新規診断法を開発することにより、透析導入患者数の減少を目指しています。
我々の目的は免疫細胞と尿細管細胞のクロストーク並びに、IL-36系がAKIからCKDに移行するメカニズム、特に腎組織の繊維化にどう関与するのかを遺伝子改変マウスと臨床検体の両方を用いて明らかにすることです。私たちはAKIの患者尿でIL-36が亢進する事とAKI腎生検組織でIL-36陽性細胞が出現する事を見いだし、IL-36系に注目しています(Kidney Int, 2018)。本研究の独創的な点は遺伝子改変技術や細胞マーカーなどの技術を使用しつつ、豊富な臨床例での検体を蓄積してきた実績を生かして、基礎?臨床両面からAKIからCKDに移行するメカニズムの解明を目指している点です。さらにIL-36系は腎病変だけでなく、乾癬やクローン病などのTh17系が関与する病態に広く関わっている可能性があり、臓器をこえた普遍性のある内容でその解明は重要と言えます。
私たちは、すでにAKI患者尿で造影剤使用の6時間後で尿中IL-36αが上昇し、早期にAKIを診断できる早期バイオマーカーとなり得る可能性を示しています。さらに、AKI患者尿を倫理委員会の認可を得て100症例以上集めつつあり、AKI腎生検検体も20年以上にわたり約50症例の検体の保存があり(承認番号22-61、22-78) 、腎生検の組織中のIL-36αの染色をしています。AKI症例の予後や原因(腎前性、急速進行性腎炎、あるいは薬剤性等)により尿中IL-36α値が変わるか、あるいは腎生検組織で浸潤細胞や尿細管でのIL-36αの発現パターンに差があるかなどを検討し、ヒトのAKIの病態への関与、並びに新規診断の尿中バイオメーカーになりうるか探索しています。
我々の目的は免疫細胞と尿細管細胞のクロストーク並びに、IL-36系がAKIからCKDに移行するメカニズム、特に腎組織の繊維化にどう関与するのかを遺伝子改変マウスと臨床検体の両方を用いて明らかにすることです。私たちはAKIの患者尿でIL-36が亢進する事とAKI腎生検組織でIL-36陽性細胞が出現する事を見いだし、IL-36系に注目しています(Kidney Int, 2018)。本研究の独創的な点は遺伝子改変技術や細胞マーカーなどの技術を使用しつつ、豊富な臨床例での検体を蓄積してきた実績を生かして、基礎?臨床両面からAKIからCKDに移行するメカニズムの解明を目指している点です。さらにIL-36系は腎病変だけでなく、乾癬やクローン病などのTh17系が関与する病態に広く関わっている可能性があり、臓器をこえた普遍性のある内容でその解明は重要と言えます。
私たちは、すでにAKI患者尿で造影剤使用の6時間後で尿中IL-36αが上昇し、早期にAKIを診断できる早期バイオマーカーとなり得る可能性を示しています。さらに、AKI患者尿を倫理委員会の認可を得て100症例以上集めつつあり、AKI腎生検検体も20年以上にわたり約50症例の検体の保存があり(承認番号22-61、22-78) 、腎生検の組織中のIL-36αの染色をしています。AKI症例の予後や原因(腎前性、急速進行性腎炎、あるいは薬剤性等)により尿中IL-36α値が変わるか、あるいは腎生検組織で浸潤細胞や尿細管でのIL-36αの発現パターンに差があるかなどを検討し、ヒトのAKIの病態への関与、並びに新規診断の尿中バイオメーカーになりうるか探索しています。
2)慢性腎臓病の進行防止を目標として、腎予後と腎繊維化を予測する新規のバイオマーカーの検討
CKDは、非常に頻度の多い病態で、成人人口の14%(日本全国で1330万人以上)と言われています。高知においては当教室と関連病院、高知市医師会、県行政が中心となり、CKD病診連携協議会が立ち上がり、当教室の関連病院?同門会の先生方にもご協力いただきまして、全国的にも注目される程、CKDの地域連携がスムーズに行っております。この強いネットワーク生かした独自の疫学的な臨床研究を進めたいと考え、CKDの進行防止を目標として、腎予後と腎繊維化を予測する新規のバイオマーカーの検討を行ってきました。我々は5年間の約500名のデータを解析し、血中αKlotho濃度がCKDの早期(ステージ2)より低下し、この低下は心血管事故などの予後規定因子になることを発表してきました(Clin Exp Nephrol 2013)。また繊維化に関わるWnt signal に関わる新規の蛋白のプロレニンがCKD進行と共に血中濃度が上昇すること(Clin Exp Nephrol 2015)、Wnt signalを調整し繊維化に関与するDkk1, Sclerostinの血中濃度が腎機能により変化する事を発表してきました(NDT 2018)。
またCKD啓発に関しては、厚生労働省研究班[慢性腎臓病(CKD)の普及?啓発に関する政策研究事業]についても四国地区の代表施設として貢献しております。
またCKD啓発に関しては、厚生労働省研究班[慢性腎臓病(CKD)の普及?啓発に関する政策研究事業]についても四国地区の代表施設として貢献しております。
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臨床研究
1)脊椎関節炎の新規画像診断法の開発および疫学調査
脊椎関節炎は、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連脊椎関節炎などから構成されています。現在、脊椎関節炎の疾患概念が改訂され、また新規分子標的治療(TNF阻害剤、IL-17阻害剤、IL-23阻害剤、JAK阻害剤など)の開発が進み、世界的に注目されています。脊椎関節炎は、その疾患活動性とともに心血管疾患や癌などの合併率が高まり生命予後を低下させるため、その対策は急務であります。本研究では、海外の国々と脊椎関節炎の疫学並びに臨床的特徴や治療状況などの合同調査を行い、心血管疾患や癌の危険因子について報告してきました。
特に、膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法後の反応性関節炎の疫学調査および臨床的特徴の検討などを倉敷成人病センターとも合同で発信してまいりました。その結果は新たな試みとして海外からも注目されています。 また、我々は、2008年より脊椎関節炎の早期で確実な診断につながるモダリティの検討を行っています。さまざまな核種を用いた核医学的な検討により、FDG-PET/CTが下図のように早期から付着部炎を同定できるモダリティであることを見出してまいりました。
特に、膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法後の反応性関節炎の疫学調査および臨床的特徴の検討などを倉敷成人病センターとも合同で発信してまいりました。その結果は新たな試みとして海外からも注目されています。 また、我々は、2008年より脊椎関節炎の早期で確実な診断につながるモダリティの検討を行っています。さまざまな核種を用いた核医学的な検討により、FDG-PET/CTが下図のように早期から付着部炎を同定できるモダリティであることを見出してまいりました。
最近では、左図ように、ドイツのグループと新規の核種を用いたモダリティ(Fluoride-PET/MRI)の検討を行っております。
このように、脊椎関節炎の確度の高い新規画像診断法を確立させることにより、誤診を防止し、その結果、不適切な抗体医薬品による治療を減少させることにも繋がるため、本研究の遂行により医療経済効果が期待できるものと考えています。
このように、脊椎関節炎の確度の高い新規画像診断法を確立させることにより、誤診を防止し、その結果、不適切な抗体医薬品による治療を減少させることにも繋がるため、本研究の遂行により医療経済効果が期待できるものと考えています。
2)他のリウマチ性疾患の予後因子の同定ならびに簡易診断ツールの開発
成人発症スティル病における皮膚dyskeratosisの存在が、その疾患予後を示唆することを報告し、現在、さらに機序などの検討を進めています。
また、稀な難治性疾患の一つであります再発性多発軟骨炎に対する超音波検査を用いた軟骨炎症部位の評価検討を進行中であり、そのパターン認識より軟骨病変をきたす他の疾患との鑑別ツールになる可能性を見出してきています(右の図)。
また、稀な難治性疾患の一つであります再発性多発軟骨炎に対する超音波検査を用いた軟骨炎症部位の評価検討を進行中であり、そのパターン認識より軟骨病変をきたす他の疾患との鑑別ツールになる可能性を見出してきています(右の図)。
3)IgG4関連疾患のバイオマーカー開発
IgG4関連疾患は日本から発信した疾患であり、現在、世界中で、多くの科にまたがる疾患でもあり、非常に注目されています。
我々は、バイオマーカー研究に以前より取り組んでおり、IgG4関連疾患の主病変の一つである線維化に注目し、線維化マーカーなどの検討を行っています。
左の図のように、線維化マーカーであるELFスコアおよびDkk-1が臓器病変数や広がりと相関し、疾患の病変の広がりを予期する可能性、そしてこれらを予期する別の簡易な血清因子の同定を試みています。
我々は、バイオマーカー研究に以前より取り組んでおり、IgG4関連疾患の主病変の一つである線維化に注目し、線維化マーカーなどの検討を行っています。
左の図のように、線維化マーカーであるELFスコアおよびDkk-1が臓器病変数や広がりと相関し、疾患の病変の広がりを予期する可能性、そしてこれらを予期する別の簡易な血清因子の同定を試みています。
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4)腎臓病における病理診断研究
当科は大学病院として県下より多くの腎臓病患者さんを御紹介いただいております。図1に2001年~2017年の当科における腎生検の診断結果を示しております。多くの疾患を診断治療しており、各疾患における病理学的検討、治療効果に対する検討を行っております。
(i) IgA腎症
本邦の慢性糸球体腎炎のうちで最多であり、当科の腎生検の結果でも同様の結果です。本邦では近年、扁桃腺摘出術とステロイドパルス療法を併用する扁摘パルス療法が標準療法となっております。多くのIgA腎症の患者さんは、尿潜血を主な症状としてみられますが、なかには高度蛋白尿を認める場合もあります。当科の検討でネフローゼ症候群の基準を満たすIgA腎症の患者さんのなかには、組織障害が軽微な群と極めて重症な群があり、治療に対する反応性が異なることがわかっております。
(ii)ループス腎炎
ループス腎炎は全身性エリテマトーデスの患者さんの生命予後に大きな影響を与える重要な臨床症状です。全身性エリテマトーデスの患者さんでは尿検査異常がなくても潜在的にループス腎炎があり腎生検で確認されうることが報告されています。ループス腎炎の糸球体内での組織障害部位はI、II型でメサンギウム、III、IV型で内皮側、V型で上皮側と考えられ、当科の検討でも報告の部位に電子顕微鏡で高電子密度沈着物が証明できることや内皮側および上皮側の障害を併せ持つパターンは単独病型より障害範囲が広く蛋白尿が高度であることが判っております。
(iii)ANCA関連血管炎
急速進行性糸球体腎炎の代表的な疾患群で、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の3つの疾患が含まれます。当科ではこれらの3疾患で、臨床症状や腎炎に対する治療効果について検討しております。
(iv)糖尿病性腎臓病
糖尿病の主な合併症の1つとして糖尿病性腎症が挙げられますが、糖尿病患者さんの腎機能低下の原因はそれだけには限られません。糖尿病なら糖尿病性腎症と短絡的に結論を出すべきではなく、他の腎疾患による腎機能低下である場合や両者が併存している場合の3つの病態の厳密な鑑別を行うには腎生検による組織診断を行うしかありません。それぞれ治療や予後が異なるためテーラメイドな対応が必要です。当科の検討では、腎生検による診断確定が必要と考えられた糖尿病患者さんの最終的な組織診断結果は各群がほぼ同率(約3割程度ずつ)認められることがわかっております。
本邦の慢性糸球体腎炎のうちで最多であり、当科の腎生検の結果でも同様の結果です。本邦では近年、扁桃腺摘出術とステロイドパルス療法を併用する扁摘パルス療法が標準療法となっております。多くのIgA腎症の患者さんは、尿潜血を主な症状としてみられますが、なかには高度蛋白尿を認める場合もあります。当科の検討でネフローゼ症候群の基準を満たすIgA腎症の患者さんのなかには、組織障害が軽微な群と極めて重症な群があり、治療に対する反応性が異なることがわかっております。
(ii)ループス腎炎
ループス腎炎は全身性エリテマトーデスの患者さんの生命予後に大きな影響を与える重要な臨床症状です。全身性エリテマトーデスの患者さんでは尿検査異常がなくても潜在的にループス腎炎があり腎生検で確認されうることが報告されています。ループス腎炎の糸球体内での組織障害部位はI、II型でメサンギウム、III、IV型で内皮側、V型で上皮側と考えられ、当科の検討でも報告の部位に電子顕微鏡で高電子密度沈着物が証明できることや内皮側および上皮側の障害を併せ持つパターンは単独病型より障害範囲が広く蛋白尿が高度であることが判っております。
(iii)ANCA関連血管炎
急速進行性糸球体腎炎の代表的な疾患群で、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の3つの疾患が含まれます。当科ではこれらの3疾患で、臨床症状や腎炎に対する治療効果について検討しております。
(iv)糖尿病性腎臓病
糖尿病の主な合併症の1つとして糖尿病性腎症が挙げられますが、糖尿病患者さんの腎機能低下の原因はそれだけには限られません。糖尿病なら糖尿病性腎症と短絡的に結論を出すべきではなく、他の腎疾患による腎機能低下である場合や両者が併存している場合の3つの病態の厳密な鑑別を行うには腎生検による組織診断を行うしかありません。それぞれ治療や予後が異なるためテーラメイドな対応が必要です。当科の検討では、腎生検による診断確定が必要と考えられた糖尿病患者さんの最終的な組織診断結果は各群がほぼ同率(約3割程度ずつ)認められることがわかっております。
5)腎臓病診断早期バイオマーカーの検討
腎臓病診断のゴールドスタンダードは腎生検による病理診断です。一方で、腎生検は侵襲的な検査であることや、検査によって得られる腎組織は全体の一部であり、臨床経過中に頻回に行うこともできないため時間的?空間的な情報は極めて限定されています。当科では腎生検による診断をサポート?フォローする非侵襲的バイオマーカー(microRNA、long non-coding RNAなど)(J Toxicol Pathol. 2018;31(1):23?34)の検討を行っております。
6)急性腎障害の疫学研究
急性腎障害は、今世紀に入り提唱された疾患概念で、以前は急性腎不全と呼ばれていた疾患概念に変わるものです。急性腎障害は重症?一過性の経過をとる急性腎不全や、さらにより少ない腎機能マーカー(クレアチニン、尿量)の変化まで包括する病態を指します。急性腎障害は、長期的な生命予後?腎機能予後に影響することが指摘されており(図2)、早期に診断することで予後を改善することが期待されています。しかし、疾患概念の提唱から歴史も浅いため未だに疫学や病態は不明な点が多くみられます。当科では、当院情報センターと共同研究を行い急性腎障害の疫学研究を行っております。
7)急性腎障害の診断バイオマーカーの検討
現在、本邦で検査できる急性腎障害の早期診断バイオマーカーには、L-FABP、NGALがあります。これまでに多くの大規模研究で、急性腎障害の早期診断に最も有効として報告されているバイオマーカーにTIMP2*IGFBP7 indexがあります(Crit Care 2013;17(1):R25)。すでに欧米では臨床現場で利用可能となっておりますが、本邦では未承認です。当科では、産学共同研究として本邦での実用化にむけてTIMP2*IGFBP7 indexの有効性に対する検討を行うとともにL-FABP、NGALなどのバイオマーカーと併用することで急性腎障害の病状(発症からの時期、重症度)の早期診断を行う検討をしております。
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