地上部環境の改善 虫害
施設園芸が盛んな高知県において、害虫防除に利用可能な土着天敵を発掘し、農家が容易に増殖できるような飼育システムの開発を行うとともに,害虫密度が低いときに天敵を維持するためのコンパニオンプランツやバンカープランツの開発とその利用方法を検討し,実用性についての現地試験を実施する.また,天敵の性フェロモン?集合フェロモン,害虫に対する忌避物質?産卵阻害物質を探索してそれらの応用方法を確立し,栽培圃場での効果試験を行なう.そして,土着天敵とコンパニオンプランツ?バンカープランツ,生理活性物質を用いた総合的害虫管理体系を確立し,植物の地上部環境の健全性の実現に寄与する.
新規有望土着天敵の発掘と土着天敵を利用した虫害の生物的防除環境の実現
高知県内の多くの果菜類栽培施設においては総合的病害虫管理技術(IPM)に基づく環境保全型農業が実践されているが,害虫防除に利用されている天敵資材は大半が外国から輸入したものである.これら栽培施設では,化学農薬の利用が制限されると共に,様々な土着天敵が活動していることが知られ,すでにクロヒョウタンカスミカメが188足球直播_篮球比分¥体育官网で,キイカブリダニが高知県農技センターによって実用化の運びになっている.本課題ではこれらに続く土着天敵の発掘,利用技術の開発を行うものであり,有望種としてニッポンクサカゲロウ,メスグロハナレメイエバエ,ヒメカメノコテントウ,コミドリチビトビカスミカメ,タバコカスミカメなどをリストアップしている.また,採取し,増殖した土着天敵は同一都道府県内で利用する場合に限り農薬登録せずに利用できることが,188足球直播_篮球比分¥体育官网が内閣官房の構造改革特別区域推進本部に提案して平成21年3月に認められた事に基づき,土着天敵を農家自らが更に増殖できるような増殖キットの開発を行うとともに,天敵が集合,増殖するバンカープランツやコンパニオンプランツとして利用可能な植物についてハーブ類を中心として探索する.さらにこれらの天敵のフェロモンや誘因物質などのセミオケミカルを解析し害虫密度制御への利用方法を探る.また土着天敵増殖系統と地域野生個体群のDNA解析を行うことで,増殖系統が環境に逸出した時の地域個体群への影響を回避するリスク管理体制を確立する.
- アブラムシを補食する
高知産土着天敵ニッポンクサカゲロウ幼虫
- 農薬登録間近の
高知産土着天敵クロヒョウタンカスミカメ
新規地域資源を利用した害虫防除技術の開発
植物は本来,昆虫をはじめとする動物に食べられる運命にある.しかしながら,多くの植物は,光合成を源とする多種多様な化学物質でその身を防御している.この課題では,植物の潜在的な防御機構を化学的観点から解明し,その機構を用いた新しい害虫防御技術の開発を試みることを目的とする.具体的には,被害の大きいミナミキイロアザミウマやホソヘリカメムシ,ウンカ類やヨコバイ類を中心として,高知県産の農林作物の害虫被害状況を調査すると共に,おのおのの地域で行われている地域固有の害虫防除技術をも調査し,その要因を明らかとすることを手始めとし,その中で効果的な防除方法について,化学的に解明する.以上の研究を通じて,選択的な新しい害虫防除資材を開発することで,地域固有の害虫防除技術を確立し,健全な栽培技術確立に貢献する.