生産物?残さの高度利用?高付加価値化
本プロジェクトでは,地域産物の化学的特性を調査し,生理活性物質を探索するための幅広いスクリーニングを実施する.さらに,目的化学物質の効率的な抽出方法を確立し,単離?精製?構造決定を行う.得られた物質の安全性試験を経て,製品化を実現させ,地域社会へ貢献することを目指す.
バイオマス由来の微生物機能の探索と産業利用
本課題では,食品加工や医薬品製造等の産業に活用できる有用微生物を,植物等のバイオマス資源やその醗酵物,草食動物の腸管系,および植物資源を取り巻く環境中などから分離し,微生物学,遺伝子工学,およびタンパク質工学的手法等を用いて,その特性を評価する.今日の我が国における醗酵産業の総生産高は数十兆円にのぼると言われており,今や微生物醗酵は食品加工業,医薬品製造業,化学工業,環境浄化産業などには欠かせない技術となっている.これらの産業分野では,技術革新につながる新しい機能や既存の特性を凌駕する機能を持った新奇微生物の発見が望まれている.そこで我々は,①果樹やその果実の醗酵物,草食動物の腸管などから食品加工やプロバイオティクス素材として活用できる有用微生物の分離,②予防医学分野で期待されている機能性素材β-グルカンを高生産する黒酵母(Aureobasidium pullulans)の分離と特性評価,③産業利用に有効な新機能を持つ黒酵母の育種,④高純度合成が困難な医薬品原料の製造に活用できる新奇微生物酵素の探索と特性評価,⑤特異的定量が困難な物質の定量分析に活用できる新奇微生物酵素の探索と特性評価を試みる.さらに,分離した新奇微生物や新たに見出した産業用酵素,およびそれらを活用して創生した新産業技術を基にした知的財産権の取得や実用化を目指す.
地域資源の高度化とトレーサビリティの確立
植物は光合成を源とする多種多様な化学物質を,根,茎,葉,実に蓄積する.一方,農林作物は,目的とする部位のみを収穫し,その他の多くは廃棄物として廃棄されている現状がある.また,産地偽装などに代表される用に農作物の安全性が脅かされている現状がある.そこで本研究では,農林産業廃棄物を資源として捉え,その有効利用方法を模索すると共に,地域ブランド確立の為の産地を明確にできるトレーサビリティ技術の開発を目的とする.具体的には,農林産物の廃棄状況,利用状況を調査し,当面は以下の課題に取り組む.
1)カヤの有効利用
カヤは成長するのに300年から500年掛かると言われ,300年以上経った材は高級碁盤や将棋盤として利用されている.その間にでる間伐材や実は現在廃棄物として処理されている.この膨大な量の廃棄物の有効利用方法を開発することで,省資源化高付加価値化を目指す.
2)ピーマンに含まれるフラボノイド配糖体の有効利用
ピーマンの葉にルテオリン二配糖体が多量に存在する事実を見出したことから,これを容易に精製する技術の開発をめざす.また,ピーマンの葉から上記ルテオリン二配糖体のほか,ルテオリン一配糖体,稀少分枝糖アピオースの容易な製造方法を開発すると共に,ルテオリン二配糖体生産能の高い品種の探索および栽培方法の開発,ルテオリン類を用いた機能性食品の開発を目指し,これらの産業利用の方法を探索する.
3)農林産物の低温順応機構を利用した新規細胞透過性耐凍剤の開発
耐凍性が低い細胞の凍結保存法を改良するために,作物や樹木が冬期に低温順応して凍害を防止する過程で蓄積する細胞内氷晶形成阻害物質を調べ,細胞透過性耐凍剤の補助効果が期待できる新規物質を探索する.
4)農産物が有する揮発性化合物を利用した高度トレーサビリティ技術の開発
植物の芳香を司る揮発性化合物の組成,及びエナンチオーマー比は,同一種であっても品種間あるいは生育環境によって異なることを利用して,高知県産品のブランド力の維持発展につながる品種特定,生産地特定技術の開発を目指す。