メンタリング講習会詳細
2014.07.17
冒頭、高知大学の櫻井克年理事より、メンタリング講習会についての趣旨説明がありました。大学でメンターの役割が注目されるなかで、どのようなプログラムが高知大学にとって適しているのか、先進事例から学ぶ機会としたい旨、お話がありました。
事例報告1では、高知大学総合教育センターの俣野秀典講師から、「メンタリングの活用事例の紹介〜授業コンサルの実践から〜」と題する報告がありました。
総合教育センターで実施している授業コンサルテーション(Midterm Student Feedback)では、クライアント教員からの希望を受け付けると、事前面談を経て、コンサルタント役の教員が授業の教室に入り、受講生から授業に関するコメントを収集・分析した後に、事後面談を通じて課題の把握を行います。もし、クライアント教員から希望があれば、コンサルタント教員と共同で課題解決に取組むこともします。受講生からのコメントについては、クライアント教員にかならずフィードバックすることにしています。授業コンサルテーションを通じて、クライアント教員は授業についての肯定的な部分を確認すると同時に、話すしぐさや声の大きさなどの改善点についても、受講生からの率直な意見を聞くことが出来ます。コンサルタント教員が第3者として間に入ることで、授業に対する受講生のフィードバックをより客観的に受け止めて、改善に活かすことが出来るそうです。
一般的に大学教員は自らが学生として「教授法」について学ぶ機会は少なく、試行錯誤のなかで授業のスタイルを身に付けていくことが多いと思われます。授業コンサルテーションを通じて、同僚、先輩から教授法について、客観的な意見をもらえることはとても貴重な機会であるし、広い意味で、授業コンサルテーションにはメンタリングの要素が含まれているという報告でした。
事例報告2では、高知大学医学部の安光ラヴェル香保子特任研究員から、「キャリア形成に必要なサポート〜私の経験から〜」と題する報告がありました。
安光特任研究員は、研究室でメンターであるイケボス(イケてる上司)を持ち、自らも「研究支援員制度」を利用するメンターです。そういう意味で、メンターとメンティの両方の視点から、ご自身の経験に基づいた内容の報告がありました。安光特任研究員の研究室では、イケボスの存在がチーム全体の力の向上につながっており、メンター効果がメンバー効果を生んでいる好事例のように思われました。
また、ご自身の経歴として、文系学部出身、民間企業、子育て等による10年間のブランクの後、医学部の研究員として働き、現在はスウェーデンの大学の博士課程の学生でもあることについて紹介され、ブランクと思っていた期間が、その後の研究や仕事につながっていて、無駄となることはひとつもなかった、とお話になりました。
講演後のアンケートでは、安光先生のキャリア形成の話を聞いて、参考になることが多く、勇気づけられたとのコメントが複数寄せられました。
続いて、先進事例の紹介として、名古屋大学高等教育センターの中井俊樹准教授から、「メンタープログラムの成果と課題〜名古屋大学の取組から〜」について講演がありました。
メンタリングには大きく分けてキャリア的機能、心理・社会的機能があり、これらのメンタリン機能にはメンティへの効果だけでなく、メンティをサポートすることによるメンターへの波及効果がある、との説明がありました。
また、大学によるメンタリングには、「非公式なメンタリング」と「公式的なメンタリング」があり、どちらにも長短がある。名古屋大学のスタイルは「非公式的なメンタリング」の要素が濃いが、大学によって文化や環境が異なることから、どのようなプログラムを導入するかは各機関でよく検討する必要があるとのアドバイスがありました。
メンターとメンティのマッチングについてはその困難さが想像されましたが、名古屋大学の場合は、高等教育研究センターがメンターの依頼をしてきた中で、これまでに断られた経験がないということでした。ただし、すべてがマッチングするメンターとメンティの組み合わせは奇跡的なことで、両者がうまく合わない場合には、再度マッチングを調整しているとのことです。
名古屋大学のメンタリングプログラムについては、特に他の大学から転任してきた教職員からの評価が高く、その他について単身赴任、子育てや介護と仕事の両立など具体的な課題を共有しているメンターを希望するメンティのニーズが多いようです。
終了後のアンケートでは、大学の業務量の増加、そして人員の削減があるなかで、メンターを引き受けることは、精神的な負担や時間的な負担にならないだろうかといった不安の声がありました。一方で、メンタリング効果がメンバリング効果に波及することで、組織の能力向上につながり、それがワーク・ライフ・バランスの実現につながるのではないか、という意見もありました。
メンタリング講習会参加者アンケート
回答者34名(女性18名、男性15名)
参加者アンケートの結果によれば、「とても役に立った」と回答した者が21%、「どちらかと言えば役に立った」と回答した者が61%と、満足度が高いセミナーでした。
回答のあった34名のうち、自分にとってメンターが必要と回答したのは16%、どちらかといえば必要の回答は35%でした。
- 事務職員にもメンターの配置支援は必要と思います。近年こころのバランスをとれず悩む職員が増えているようですが、職場内の異動であってもメンターが近くにいるだけでずい分働き様が変わると思います。家族と親しい友人はコアでいても職場で話ができる人を持てるよう支援があればと思います。
- メンターとは何か。メンター効果について、少しでも学ぶことができたことが良かった。
- 若手職員への接し方の参考となる話が聞けた。
- SD担当者として、具体的なメンタリングの方法、プログラムが分からなかったが、今回の講習会で非常に具体的に理解できた。
- メンターはあった方が良いと思います。ただ、メンティとメンターをうまくコーディネート(メンタリング)できるか?
- メンターの確保は今の忙しい中、大変だと思う。メンターをすることによって、教員評価等に反映されたり、具体的なメリットはあるのでしょうか。