ロールモデル
大きくのびのびと
高知大学 大学院 総合人間自然科学研究科 黒潮圏総合科学専攻
助教(執筆当時)
堀 美菜
SEKINE Kae
略歴
東京水産大学卒業。東京大学大学院修了。
なぜ研究者の道を選びましたか?
ウミガメの研究をしたくて大学に進学したのですが、実習などで漁協や市場で漁師さんの話を聞いているうちに、すっかり「人」が面白くなってしまいました。卒業論文では、資源を有効に使うために、ホッキガイを共同で獲る漁業者間の取り決めや仕組みについての研究を行いました。海外の状況がどうなのか、日本の経験を役立てられないか興味が沸いたので、大学院に進学しそのままハマりました。大学院で所属した研究室ではメコン川流域の水利用についてのプロジェクトが実施されており、カンボジアの漁業実態についての調査を行ったのがきっかけで、カンボジアと関わって10年になりました。研究者という職業の良い点は、それぞれの人の個性を独自に活かすことができることだと思います。
研究の魅力は何ですか?
主な研究テーマはカンボジアの小規模漁業です。漁業と聞くと多くの日本人はマグロ漁船などの大型の漁業を思い浮かべますが、カンボジアでは水田や水たまりでのおかずのための魚獲りの方が主流です。獲られた魚がどのように利用されるのか、家計や流通などと合わせて、人々の暮らしの中の漁業がどのようなものかを調べています。調査では農村、漁村へ行き、家々を訪問して聞き取り調査を行っているので、現地の人々の暮らしが見えてきます。同じ村へ何度も行くと顔馴染みが出来、ごはんを食べさせてもらったり、一緒に飲んだりすることもあります。内戦の傷を残し、まだまだ発展途上のカンボジアですが、知り合いの子供が育ち、町並みが発展して行くのを見ることが出来るのはとても嬉しいことです。研究者はあくまで外部者ですが、現場の声や実態を科学的に説明し、政策に反映させる橋渡し役が出来ればと思い研究に取り組んでいます。
現在の研究および生活
研究ではカンボジア、タイに年2,3回ずつ行っていますが、プライベートでは専ら自宅で音楽を聴いたり、漫画を読んだりしています。高知に来てから3年経ちましたが、大学から帰る途中にスーパーマーケットで鮮魚コーナーを見るのが日課です。高知特有の名前がついている魚や季節によって魚種が変わるのを見ながら、おいしい魚を探すのがちょっとした楽しみです。高知のカツオの品揃えは圧巻です。
今後研究者を目指す若い方へのメッセージをお願いします
色々な分野の先生方と話をしてみて下さい。研究者に対するイメージが変わってくると思います。研究者は好きなことだけやっていると思われがちですが、そんなことはありません。新しいことにチャレンジしながら、研究成果を社会に還元するために様々な工夫をしています。答えがないものと戦うことが多いので、チャレンジ精神は必要です。また、目先の物事だけに囚われない広い視野が求められます。時間や技術、資金など何かと制限がある中で、いかに小さくならずに頑張れるか、のびのびとした思考が出来るかが大事です。大学院時代に「小さくなるな、大きくのびのびと」と先生から言われましたが、これがとても難しく私自身まだまだ挑戦中です。