診療の特徴
診療の特徴
低侵襲手術
低侵襲手術について
低侵襲手術とは、患者さんの体への負担が少ない手術療法を意味し、産婦人科領域では一般的に腹腔鏡下手術やロボット支援腹腔鏡下手術を指します。腹腔鏡下手術では臍と下腹部に3か所、ロボット支援腹腔鏡下手術では臍を中心として左右に5か所の小さい穴をあけて手術を行います。従来の開腹手術と比べて、出血量や合併症、疼痛が少なく、入院は短期間ですみ、社会復帰も早いなど、様々なメリットがあります。
腹腔鏡下手術
腹腔鏡下手術は、お腹に小さい穴をあけ、スコープや鉗子を挿入し手術を行います。多くの良性疾患が腹腔鏡下手術の適応となります。
また、悪性疾患においては、2014年4月に早期子宮体癌に対して、2018年4月には子宮頸癌に対しての腹腔鏡下手術が保険適応となりました。当院でも2021年から、県内で初めて早期子宮体癌に対しての腹腔鏡下手術を開始しました。今後、ごく初期の子宮頸癌(ⅠA1期)にたいしての腹腔鏡下手術も開始する予定です。
適応疾患
良性疾患
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮頸部高度異形成
- 子宮内膜症
- 卵巣嚢腫
- 異所性妊娠など
悪性疾患
- 早期子宮体癌
ロボット支援腹腔鏡下手術
ロボット支援腹腔鏡下手術では腹腔鏡の鉗子をロボット制御で行います。ロボット自体を操作するのはロボット手術の資格を持った医師です。通常の腹腔鏡の鉗子は先端の開閉のみですが、ロボットアームでは人間の手のように関節があり、より繊細な手術手技が可能です。2018年4月に子宮筋腫?子宮腺筋症?子宮頸部高度異形成などの子宮良性疾患と早期子宮体癌にたいしてのロボット支援腹腔鏡下手術、2020年4月には骨盤臓器脱に対してのロボット支援下仙骨腟固定術が保険適応となりました。
当院でも、2022年12月から子宮良性疾患に対してのロボット支援腹腔鏡下手術を開始しました。今後、早期子宮体癌に関しても開始予定です。
適応疾患
良性疾患
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮頸部高度異形成など
入院から手術まで
入院 | 手術の2日前です。 |
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病棟スタッフからの説明 | 入院時、病棟看護師より入院中の過ごし方についての説明があります。 |
手術の説明 | 入院日もしくは手術前日に、担当医から手術についての説明を行います。ご家族の同席が必要です。 (あらかじめ外来で日程を相談いたします) |
麻酔科術前訪問 | 手術を担当する麻酔科医が手術前に診察を行い、適切な麻酔方法や手術後の疼痛管理についての説明があります。 |
手術室スタッフ訪問 | 手術を担当する手術室の看護師が術前に訪問し、手術室での過ごし方についての説明があります。 |
術前処置 | 腸管を空虚にしておくため、手術前々日に下剤を内服し、さらに手術前夜と手術当日朝に浣腸を行います。創部感染の予防として、臍の清掃を行います。手術の種類によっては、陰毛をカットする場合があります。 |
飲食 | 通常、食事は手術前日夕食まで、飲水は術前3時間前まで可能です。詳しくは産科婦人科担当医と麻酔科医の指示にしたがってください。 |
服薬 | 入院期間が長引く可能性もありますので、常用薬は予定入院日数より少し多めにお持ちください。入院後に薬の内容を確認し担当医または薬剤師より服薬指導をします。 |
手術後から退院まで
ロボット支援腹腔鏡下手術では腹腔鏡の鉗子をロボット制御で行います。ロボット自体を操作するのはロボット手術の資格を持った医師です。通常の腹腔鏡の鉗子は先端の開閉のみですが、ロボットアームでは人間の手のように関節があり、より繊細な手術手技が可能です。
手術翌日朝より飲水を開始し、昼から食事を開始します。はじめは重湯から徐々に普通の食事に戻していきます。
食事が通常にとれており、排便障害?排尿障害がなく、術後の血液検査や診察で経過がよければ退院となります。
退院は、術後5‐7日となります。手術内容や術後の状況により変化します。
退院後
退院後は自宅療養となりますが、一般的な家事やデスクワーク程度の軽作業であれば退院後数日から1週間くらいで可能となります。長時間の立ち仕事や激しい運動などの開始時期に関しては、個々人の状況により異なりますので、退院時に担当医とご相談ください。退院後に、発熱がある、不正出血がある、創部の痛みが強くなる、排尿や排便に異常があるなど気になる症状を認めたときは、当科外来にお電話でご相談ください。
(休日?夜間は2‐3病棟にご連絡ください)
出生前診断
出生前診断について
出生前検査とは、胎児が生まれつき身体の形の異常や染色体異常(先天異常)をもっていないかなどを、お母さんのおなかの中にいる間に調べる検査です。前もって知っておくことにより、生まれた後の治療やこころの準備ができる場合がある一方で、診断がつくことによって悩みが増える場合もあります。検査には脳や心臓などの臓器の異常を診断する形態学的検査(胎児超音波検査)と、染色体異常の診断やリスクを判定するもの(遺伝学的検査)があります。遺伝学的検査は一般に行う検査ではなく、特別な理由や強い希望により受けることができる検査です。したがって検査を受ける前には、検査の方法や合併症、検査でわかることとわからないこと、わかる疾患についての理解、検査をうけることの意味について十分考えていただくことが重要です。また検査結果について十分理解してその後の対応を一緒に考えることが必要です。大学病院の特徴
高知県内で唯一、超音波専門医(産婦人科)、胎児心エコー認証医が在籍しており、より専門的な診断を行う事が可能です。
また、出生前遺伝学的検査についても高知県で唯一、超音波+血清マーカー検査(コンバインド検査)、NIPT、クアトロテストすべてを1施設で行うことが可能なため、遺伝カウンセリング、検査方法の選択をスムーズに行う事が出来ます。
また、診断がついた後は、常勤の新生児専門小児科医師、小児外科医師、小児循環器専門小児科医師とともに情報共有を行い疾患毎に方針を検討し、児およびご家族にとって最も適した治療の選択肢を検討します。
また、出生前遺伝学的検査についても高知県で唯一、超音波+血清マーカー検査(コンバインド検査)、NIPT、クアトロテストすべてを1施設で行うことが可能なため、遺伝カウンセリング、検査方法の選択をスムーズに行う事が出来ます。
また、診断がついた後は、常勤の新生児専門小児科医師、小児外科医師、小児循環器専門小児科医師とともに情報共有を行い疾患毎に方針を検討し、児およびご家族にとって最も適した治療の選択肢を検討します。
胎児超音波検査
目的
ヒトは生まれながらにして100人に3-5人の頻度で何らかの生まれつきの病気を持っています。超音波検査では赤ちゃんや胎盤などの形や働きに問題が無いかをチェックし、異常があれば対処方法を考え、準備をして分娩を迎えることが出来ることを目的としています。基本的には「異常を探すために行う検査」ではなく、胎児が順調に発育しているか情報を収集する検査とお考え頂くと良いと思います。
検査の種類と時期
通常妊婦健診時
妊娠経過中に赤ちゃんの発育(大きさ)が順調であるか、羊水の量、胎盤や臍帯に異常がないかを確認します。日本では慣習的に妊婦健診毎に超音波検査が行われてきましたが、限られた外来時間の中で毎回超音波検査を行うことは効率が良くありません。また、毎回超音波検査を行ったからといって赤ちゃんの予後が良くなることもありません。最近では妊婦健診の度に毎回超音波検査行わない施設もあります。その代わり、以下に示すように妊娠期間中により細かく専門的な超音波検査を行うようになってきています。
胎児超音波スクリーニング(妊娠中期)
妊娠11週0日~13週6日(赤ちゃんの大きさ:頭殿長CRLで45~84mm)の間に施行します。この時期の赤ちゃんを評価することにより、赤ちゃんの染色体の病気(特にダウン症に代表されるトリソミーなど)や体の病気をある程度見つけることが出来ると言われています。ただし、すべてのお母さんが妊娠初期超音波スクリーニング検査の対象になるわけではありません。
胎児超音波スクリーニング(妊娠中期)
2022年4月からすべてのお母さんと赤ちゃんを対象に胎児超音波スクリーニング外来として、通常の妊婦健診では数分しか時間を割くことが出来ない超音波検査を、赤ちゃんひとりあたり約30分かけて行う特殊外来を開設しました。超音波検査で赤ちゃんを評価しやすい妊娠20週~25週前後で行います。赤ちゃんのそれぞれのパーツ(頭部、顔面、頚部、胸部、腹部、骨盤、四肢、脊椎、臍帯、胎盤など)を一通りチェックし問題が無いか検索します。特に心臓は先天的な病気が起きやすい臓器であり、赤ちゃんの予後にも大きく関わります。検査費用は4950円(保険適応外、188足球直播_篮球比分¥体育官网5年3月現在)となります。病気の可能性がある場合には胎児特殊外来で超音波精密検査を受診して頂き、さらに時間をかけて状態を評価し、治療方針を決定します。胎児超音波スクリーニング検査は義務ではありませんが、赤ちゃんの情報を少しでも見逃さないようにすべてのお母さんに妊娠期間中1回は行って頂きたいと考えています。
出生前遺伝学的検査
出生前遺伝学的検査を行う前にはまず、出生前遺伝学的検査に関する遺伝カウンセリングを行い検査を受けるかどうかについて考えます。遺伝カウンセリングでは、胎児の心配事に対してどのように対応するのがご夫婦にとって最良と思われるか、とりうる選択肢を遺伝の専門家と一緒に考えます。当院で行っている検査方法には以下のようにいくつか種類があり、検査でわかることやその程度、検査を受ける時期などは検査の種類によって様々です。当院で分娩予定の妊婦さんでない他院に通院中の方は、他院からの紹介に基づいて予約を受け付けています。遺伝学的検査の種類
検査の分類 | 検査の種類 |
---|---|
リスクを判定する検査 (非確定的検査) |
母体血清マーカー検査 超音波検査(NT、ソフトマーカー) 非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT) NT検査+母体血清マーカー(コンバインド検査) |
診断を確定する検査 (確定的検査) |
絨毛検査 羊水検査 |
週数別出生前検査
週数 | 検査名 | 対象者 |
---|---|---|
10~16週ころ | 非侵襲的出生前遺伝学的検査 (NIPT) |
希望者のみ |
11~13週 | NT検査+その他の超音波マーカー | 希望者のみ |
11~13週 | NT検査+母体血清マーカー (コンバインド検査) |
希望者のみ |
11~14週 | 絨毛検査 | 当院では行っていません |
15~18週 | 母体血清マーカー検査 (クアトロテスト) |
希望者のみ |
16週以降 | 羊水検査 | 適応がある場合のみ |
20~25週 | 胎児超音波スクリーニング検査 (形態学的検査) |
全例 |
ご確認頂きたい点
出生前検査は万能では無いということ
近年の技術の進歩により、超音波検査や遺伝学的検査を行うことで胎児のかなりの情報を知ることが出来るようになってきました。しかし、いずれも万能な検査ではなく、出生前検査で指摘されていなかった異常が出生後に分かることもあります。また逆に、出生前検査で異常が疑われていても出生後何も異常がないこともあります。出生前検査で異常が疑われると、お母さんや家族は不安を抱えたまま妊娠経過を過ごさなければなりません。言いかえると、出生前検査をしたことで余計な不安を抱える可能性があることになります。つまり、出生前検査とは「知る必要がある」情報はもちろんのこと、「知る必要がない」情報まで分かってしまう可能性のある検査なのです。
検査を受けるにあたって
得られた情報の取り扱いについて
基本的には検査で分かった情報はお母さんと赤ちゃんのものであり、妊娠の継続にかかわるような事や、母児の生命にかかわるような大事な情報は担当医から説明をさせていただきます。しかし、中には「言って欲しくなかったのに」という情報も含まれていることがあります(赤ちゃんの性別だったり、命にはかかわらない小さな病気だったり)。お伝えするべき情報かどうかはある程度担当医の判断に任せていただきたいと思いますが、そういった情報をお母さん自身が知りたいと思っているかどうかは検査をする前に確認しておく必要があります。一度決めた内容を途中で変更することはいつでも可能です。また分からないことがありましたら担当医や看護師にご相談ください。確認が出来ない場合は担当医の判断で、検査で分かった情報についてお伝えするかどうか決めさせていただきたいと思います。
遺伝性腫瘍
遺伝性腫瘍について
がんは、おもに「環境要因」と「遺伝要因」によって遺伝子が傷つくことで発生するといわれます。
『環境要因』には、食生活?喫煙?飲酒などの生活習慣やホルモンやウイルス感染などがあります。
『遺伝要因』とは、生まれたときから、がんの発生と強く関わる遺伝子に変化(病的バリアントや病的変異といいます)を持っている場合を指します。
この遺伝子の変化に環境要因が加わり発生するのが、遺伝的ながん=遺伝性腫瘍になります。遺伝性腫瘍は、全てのがんの約5%といわれています。
また、遺伝性腫瘍の原因となる先天性の病的バリアントの多くは、50%の確率で次の世代に受け継がれます。
当科では、臨床遺伝診療部と連携し、遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリング、遺伝学的検査(血縁者の方の検査も行っています。)、サーベイランス、リスク低減手術などを行っています。
『環境要因』には、食生活?喫煙?飲酒などの生活習慣やホルモンやウイルス感染などがあります。
『遺伝要因』とは、生まれたときから、がんの発生と強く関わる遺伝子に変化(病的バリアントや病的変異といいます)を持っている場合を指します。
この遺伝子の変化に環境要因が加わり発生するのが、遺伝的ながん=遺伝性腫瘍になります。遺伝性腫瘍は、全てのがんの約5%といわれています。
また、遺伝性腫瘍の原因となる先天性の病的バリアントの多くは、50%の確率で次の世代に受け継がれます。
当科では、臨床遺伝診療部と連携し、遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリング、遺伝学的検査(血縁者の方の検査も行っています。)、サーベイランス、リスク低減手術などを行っています。
婦人科で代表的な遺伝性腫瘍
遺伝性乳癌卵巣癌(Hereditary Breast and Ovarian Cancer;HBOC)
HBOCは、遺伝性腫瘍の1つです。BRCA1とBRCA2とよばれる、がんの発生を抑制する遺伝子に、生まれたときから病的バリアントを認め、乳がんや卵巣がんを発症する可能性が高くなります。その他、前立腺癌や膵臓癌の発症リスクも高くなるといわれています。
当科では、臨床遺伝診療部?乳腺センターと連携し、遺伝学的検査、卵巣癌サーベイランス、リスク低減卵巣卵管摘出術を行っています。
当科では、臨床遺伝診療部?乳腺センターと連携し、遺伝学的検査、卵巣癌サーベイランス、リスク低減卵巣卵管摘出術を行っています。
リンチ症候群
リンチ症候群は、遺伝性腫瘍の1つです。DNA複製過程で生じたエラーを修復する蛋白の1つであるミスマッチ修復(MMR)蛋白をコードする遺伝子(MMR遺伝子)に、生まれたときから病的バリアントを認め、大腸がんや子宮体がん、卵巣がんを発症する可能性が高くなります。その他、胃がんや膀胱がんの発症リスクも高くなるといわれています。
当科では、臨床研究として子宮体癌ならびに卵巣癌の方へのユニバーサルスクリーニングを行っています。
当科では、臨床研究として子宮体癌ならびに卵巣癌の方へのユニバーサルスクリーニングを行っています。