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診療案内

周産期

当院産科の診療の特徴

188足球直播_篮球比分¥体育官网産科では、高知県の地域周産母子医療センターとして地域の医療機関と連携しながら診療を行っています。対象としてはローリスク妊娠からハイリスク妊娠まで幅広く受け入れています。
外来診療としては、産科一般外来、胎児スクリーニング外来、産科特殊外来、遺伝カウンセリング外来(出生前診断)と分かれて診療を行っています。
地域周産母子医療センターであるため、診療時間内はもちろんのこと24時間365日母体搬送受け入れや緊急対応を行っています。
当院は総合病院であり、内科疾患合併妊婦や精神疾患合併妊婦など関係各科と密に連携を行い、妊娠期~産褥期まで安全に過ごせるように管理を行っています。近年精神疾患合併妊娠が増加していますが、高知県内で精神疾患合併妊婦を最もみているのが当院になります。長年の経験を活かし、精神疾患合併妊婦の方が妊娠期から産褥期までより健やかに過ごせるように産婦人科だけでなく、精神科、助産師外来、産婦人科病棟スタッフ、行政と連携を行っています。
胎児異常についても周産期(母体?胎児)専門医のもと、胎児期から可能な限りの出生前診断を行い、妊婦胎児に応じて適切な胎児治療や出生後の処置につなげることができるようにしています。
高知県の現状として、周産期に関する全ての疾患に対応できるわけではなく、妊娠中の合併症や胎児疾患によっては適切な県外施設に紹介する場合もあります。

診療内容紹介

一般妊婦健診(産科外来)
当院では合併症のない正常な妊娠と、基礎疾患(婦人科疾患、内科疾患、精神疾患など)を持つハイリスク妊娠の管理を行っています。ハイリスク妊娠の場合は必要に応じて他科と連携し、分娩に向けて妊婦さんをサポートしていきます。
また、妊娠によっておこる合併症(妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、切迫流早産など)の予防?早期発見?治療にも積極的に取り組んでいます。
健診のスケジュール
  • 妊娠10週までは2~3週間ごと
  • 妊娠10~23週:4週間ごと
  • 妊娠24~35週:2週間ごと
  • 妊娠36週~分娩まで:1週間ごと
*上記は目安です。妊婦健診で異常が指摘された場合には妊婦健診間隔の短縮や、必要に応じて入院管理を行います。
*出血や腹痛等の異常に気付いたときは、定期健診の日まで待たずにその都度早めに連絡?受診してください。
妊娠中に行う検査
妊婦健診では毎回、血圧測定?体重測定?尿検査?経腹超音波検査(胎児計測、羊水量評価)を行います。加えて、週数に応じて下記の検査を行います。
  • 妊娠初期検査(妊娠10週頃)
    血液型、Rh型、不規則抗体、血算、生化学スクリーニング検査、凝固系検査、B型肝炎、C型肝炎、風疹、梅毒、成人T細胞白血病、HIV、トキソプラズマ、クラミジア、子宮頸部細胞診、腟培養検査
  • 子宮頸管長測定(妊娠20週前後に2回、妊娠30週前後に1回)
  • 胎児超音波スクリーニング検査(妊娠20週~25週頃)
    経腹超音波で胎児?胎盤?臍帯等のスクリーニング検査を行います。詳細は「胎児超音波スクリーニング検査」の欄をご参照ください。
  • 妊娠中期検査(妊娠24~28週頃)
    50g糖負荷試験、血算
  • 妊娠後期検査(妊娠35~37週頃)
    膣培養検査、血算、凝固系検査
  • 術前検査(予定帝王切開の方のみ、妊娠35~36週頃)
    血算、生化学スクリーニング、凝固系検査、心電図、胸部レントゲン

妊婦健診の検査項目詳細

妊娠初期検査(妊娠10週頃)
自費:約13,000円(公費負担制度があります)
血液型(ABO式、Rh式)
分娩時には、大出血をきたし輸血を必要とする事態となることもあります。そういった緊急時に備えて、あらかじめ血液型を確認します。またRh陰性のお母さんの場合、Rh不適合妊娠といって、赤ちゃんに貧血や発育異常を起こすことがあり、特殊な妊娠管理が必要となることもあります。
不規則抗体検査
分娩時には緊急で輸血が必要なことも珍しくありません。妊娠中に不規則抗体がないことが確認できていれば、簡単な試験で早急に安全な輸血をすることができます。また、お母さんが何らかの不規則抗体を持っていると、胎児水腫(赤ちゃんの全身浮腫)や胎児貧血、新生児黄疸を起こすことがあります。
血液検査(貧血の有無など)、尿検査
妊娠初期?中期?後期と3回の血球検査を行います。妊娠中は、赤ちゃんの鉄分必要量の増加に伴い、鉄欠乏性の貧血になりやすくなります。貧血が強くなると赤ちゃんの発育や出産?産後に影響しますので、食事療法や鉄剤内服などで治療します。
血液凝固能検査
妊娠初期?後期に凝固能検査を行います。凝固能とは、出血時に止血する能力のことです。凝固能が低下していると、妊娠中や分娩時に出血リスクがあるため、検査を行います。
血糖値検査
近年、糖尿病患者は急増しています。お母さんに糖尿病がある場合、様々な周産期合併症(下記に記載)の頻度が上昇しますので、妊娠前にはわからなかった糖尿病を発見するために妊娠初期に血糖値を測定します。
  • 妊婦への影響
    羊水過多、妊娠高血圧症候群、巨大児による難産、切迫流早産など
  • 胎児?新生児への影響
    先天形態異常、巨大児、子宮内胎児発育遅延、胎児機能不全、胎児死亡、新生児低血糖、新生児呼吸窮迫症候群、新生児多血症、新生児低カルシウム血症など
以前の妊娠の際に、原因不明の流産や死産の経験のある方、先天異常児や巨大児(4kg以上の赤ちゃん)を出産した方、家族に糖尿病の患者さんがいる方は事前に担当医に御相談下さい。
梅毒血清反応
梅毒は、梅毒菌による性行為感染症です。お母さんが感染すると、母子感染(胎内感染)を起こし、先天梅毒児や流早産、子宮内胎児死亡となることがあります。検査は、2種類の血液検査(梅毒血清反応)で判定しますが、はっきりしない場合は更に別の検査を行うこともあります。もし、感染していた場合は、抗生物質で治療します。また、お父さんの検査?治療も同時に必要です。治療後であれば、産後の母乳哺育も可能です。
風疹抗体
妊娠初期に風疹に初感染(初めて体内に風疹ウイルスが侵入)した場合、胎内感染により赤ちゃんに先天性風疹症候群(白内障?先天性心疾患?難聴?精神運動発育遅延など)と呼ばれる先天異常を起こすことがあります。感染の有無は、風疹血清抗体価検査(風疹HIといいます)で調べます。風疹HIが高ければ、2週間後に再度検査し、感染かどうかを判定します。逆に、風疹HIが低い方は、今後感染する危険があるので、妊娠6ヶ月頃までは必要時以外の外出を避け、マスク着用?うがい?手洗いを徹底しましょう。また、出産後には必ず風疹予防接種(私費)を受けるようにしましょう。
B型肝炎ウイルス抗体
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染(血液?精液?唾液)で起こる肝炎(肝臓の炎症)です。お母さんがHBVに感染していると、母子感染(産道感染)や生後の一般生活の中で、赤ちゃんに感染を起こす危険性があります。そこで、お母さんのB型肝炎ウイルス抗体を検査し、もし感染していた場合は、出生後赤ちゃんにB型肝炎ワクチンなどを投与することで、95%以上の確率で母子感染を防ぐことができます。分娩方法は経腟分娩でよく、母乳哺育も可能です。
C型肝炎ウイルス抗体
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染(血液?精液?唾液)で起こる肝炎(肝臓の炎症)です。日本のHCVキャリアは約200万人以上と推定され、妊婦では0.5~1%といわれています。母子感染率は約10%と考えられていますが、残念ながら現在のところ、母子感染を防ぐ方法はありません。ただ、日常生活の中で他人にうつす可能性があることと、20~30年という長い経過を辿って、慢性肝炎?肝硬変?肝癌へと進行することがあるので、自己管理(健診)として検査することが必要です。分娩方法は経腟分娩でよく、母乳哺育も可能です。
HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)抗体
HTLV-1は、ATL(成人T細胞白血病)の原因ウイルスで、主要な感染経路は輸血、性行為、母子感染で、母子感染の大部分は母乳授乳による感染といわれています。一旦HTLV-1に感染するとウイルスを排除する手段はなく、ATLに対する有効な治療法も確立されていないので、お母さんのHTLV-1抗体を測定し感染の有無を知っておくことで、赤ちゃんへの感染率を下げることができます。
HIV(エイズウイルス)抗体
日本でも年々HIV感染者数は増加し、現在では年間約1000人もの感染者が報告されています。HIV感染妊婦は、全妊婦の10,000人に1人といわれています。感染経路は、血液や精液での感染、母子感染(産道感染?胎内感染?母乳感染)が考えられています。近年、HIV/AIDSの治療法は著しく進歩し、新薬や多剤併用療法(一度に複数の薬剤を使用する方法)の普及により、長期生存も可能となっています。もはや、HIV/AIDSは手の打ちようのない致死的な感染症ではなくなったと言えます。母子感染に関しても、十分に管理されたお母さんでは、感染率は約2%とかなり改善されています。以上のことから、感染妊婦の早期治療開始と母子感染の防止を目的に、妊婦健診でHIV抗体検査を行うことはとても大切です。当院では、全てのお母さんに対し、同意を得た上で血液検査を行っています。もちろんプライバシーは確実に保護されます(結果は御本人に直接お伝えします)。尚、この検査では、感染していない方でも一定の割合(約0.3%)で陽性となってしまいます。陽性となった方には確認検査(二次検査)を行いますが、そのうち約95%の方は感染していないことが確認されます(これを疑陽性といいます)。
トキソプラズマ
トキソプラズマは寄生虫の一種で、ネコの糞便や感染したウシ?ブタ?ニワトリの生肉を食べることで感染します。お母さんが感染した場合、胎盤を介して赤ちゃんにも感染し、先天性トキソプラズマ症(水頭症?脳内石灰化?網膜脈絡膜炎?肝脾腫など)を発症することがあります。トキソプラズマ抗体のない方は、生肉は食べない、野菜や果物はよく洗う、妊娠中に新しい猫を飼わないといった感染予防策をとってください。
クラミジア抗体
クラミジアは性行為感染症の中で最も頻度が多く、感染した場合でも約70%は無症状で、妊娠して初めて発見される場合が多くあります。妊娠中無治療で放置した場合、子宮頚管(子宮の入り口の部分)から絨毛膜羊膜(赤ちゃんや羊水、胎盤を包んでいる膜)へと炎症が拡大し、そのために破水や流早産となることがあります。また、分娩時に産道で赤ちゃんに感染すると新生児結膜炎や肺炎を発症させることがあります。そのため、妊娠中にクラミジア抗体を検査し、感染していると考えられた場合は、妊娠中でも抗生物質の内服で積極的に治療すること、お父さん(パートナー)も一緒に治療すること、が大切です。
妊娠中期検査(妊娠24週~28週頃)
自費:約2,000円
血球検査(貧血の有無、白血球数?血小板数の確認)
血糖値検査
胎盤からインスリン拮抗ホルモン(血糖値を上げやすいホルモン)が産生されるため、妊娠中期以降はインスリンが効きにくい状態になり、血糖値が上昇しやすくなります。当院ではこの時期に、50g糖負荷試験(糖水を飲んだ後に血糖値の上がり具合を検査する試験。140㎎/dl以上が陽性)を行います。
糖負荷試験で陽性の患者さんには、より精密な検査(75g糖負荷試験:空腹の状態でサイダーを内服し、内服前、30分後、1時間後、2時間後の4回血糖測定を行い、それぞれの血糖値が内服前92mg/dl、1時間後180mg/dl、2時間後153mg/dlを1回でも超えた場合に妊娠糖尿病と診断します)を行います。妊娠糖尿病と診断された場合には、入院し血糖管理を行います。適正な栄養管理を行っても血糖値が高い場合にはインスリンによる治療を行います。分娩後は血糖値は正常に戻ることがほとんどであり、分娩2-3ヶ月後に75g糖負荷試験を行い異常が無いことを確認します。妊娠糖尿病と診断された方は将来の糖尿病のリスクが高いと言われており、継続した経過観察(年に1度の血糖測定、HbA1c値のチェック)が推奨されます。
子宮頸管長測定
子宮の出口のことを子宮頸管、その長さを頸管長と呼びます。妊娠20週~24週の頸管長の平均は3~4cm程度ですが、中には2cm以下に短くなる場合があります。子宮頸管長が短くなると早産リスクが高くなるといわれています(20~24週で2cm未満→75%が早産に至るというデータあり)。高知県では早産リスクのある妊婦さんを早期発見するため、20週前後にすべての妊婦さんを対象に子宮頸管長を測定しています。子宮頸管長短縮を認めた場合には、仕事を休み自宅で安静に過ごしたり、入院し子宮収縮抑制剤の点滴治療を行うこともあります。
妊娠後期検査(妊娠35~36週頃)
血球検査(貧血の有無、白血球数?血小板数の確認)
腟分泌物培養検査(おりものの細菌検査)→GBS(B群溶血性連鎖球菌)の有無
GBS(B群溶血性連鎖球菌)は、腟?直腸に常在する細菌です。妊婦の保有率は約10~20%で、分娩時に産道で赤ちゃんに感染するとその約1%に新生児GBS感染症(肺炎や髄膜炎など)を発症するとされています(99%の赤ちゃんは無症状で経過)。妊娠後期にGBSが検出された場合には、分娩時に抗生物質を点滴することで、感染を予防します。
分娩について
入院時から分娩、産褥、育児指導まで助産師がきめ細やかにサポートします。
異常分娩の場合は小児科医も分娩に立ち会います。
帝王切開について
母体あるいは児の状態により、経腟分娩が危険と判断される場合には帝王切開を行います。
麻酔は麻酔科医が担当し、緊急時以外は腰椎麻酔と硬膜外麻酔で行います。
また、小児科医も手術に立ち会います。

超音波スクリーニング

超音波スクリーニング外来とは
ヒトは約3~5%に産まれながらに何らかの先天異常をもつとされています。先天異常といっても染色体疾患や遺伝性疾患から原因不明のものまで幅広く存在します。先天異常の中でも産まれてすぐに処置が必要であったり、胎児の段階で治療が必要となるものなども存在しています。超音波検査ですべての疾患が分かるわけではありませんが、児や胎盤の形態や機能に問題がないかをある程度の時間をかけてチェックします。その上で異常や気になる所見があれば追加で精査を行い診断を確定させ、児にとって最も適した分娩時期、分娩場所、分娩方法を検討します。得られた情報から、疾患毎に必要な治療方法などの対処法を考えます。母児にとって適切な分娩に結びつけることができるようにすることを目的としています。
スクリーニングの内容
通常の妊婦健診との違い
通常の妊婦健診では主に胎児の発育や羊水量などを超音波診断装置で評価しています。児の発育、羊水量や胎盤に異常がないかを確認し、妊娠経過が順調なことを確認しています。妊婦健診時にはほぼ毎回超音波検査を行っていますが、一人ひとりに充てる事が出来る時間は限られており、毎回全ての項目を確認できているわけではありません。そのため妊娠期間中に時間をかけてより細かく超音波検査を行う外来としてスクリーニング外来をもうけています。
妊娠初期スクリーニング
妊娠11週0日~妊娠13週6日の間に行います。週数が早い時期に児の評価を行うことで染色体疾患(21トリソミー:ダウン症候群など)やその他の大きな先天疾患がないかをある程度診断することが可能です。全ての妊婦が対象となるわけではなく、ご夫婦ごとに出生前検査の対象となる部分もあるため、出生前カウンセリング外来の項目も参照してください。
胎児超音波スクリーニング(妊娠中期)
当院では基本的に全例妊娠中期に胎児スクリーニングを行っています。通常の妊婦健診では胎児発育など最低限の項目のみの確認となりますが、胎児ひとりに対して概ね20~30分の時間をかけて胎児を一通り確認しています。内容としては頭部、顔面、頸部~脊椎、胸部、腹部、骨盤、四肢、臍帯、胎盤となります。特に先天性心疾患は発生頻度も高く、疾患によっては出生後すぐに児の処置が必要なものも存在しています。時間をかけてそのような疾患がないかを確認しています。
検査費用として当院では胎児一人あたり5,000円(保険適応外、自費)をいただいています。スクリーニング検査は義務ではありませんが、母児にとって適切な妊娠出産に至れるように妊娠期間中に一度は受けていただきたいと考えています。
胎児スクリーニングの精度
時間をかけてしっかりと検査を行いますが、あくまでお腹の中にいる児の情報全てを得ることはできません。超音波装置や技術の発展により以前と比べて出生前に先天疾患を診断できる確率はかなり上がっていますが、それでも万能な検査は存在していないのが現状です。疾患の種類によっては出生前にみつかっていなかったことが生後に判明したり、逆に出生前にみつかっていた異常が生後には正常であること場合もあります。異常を指摘されると妊婦やその家族にとって不安やストレスを与えることになるかもしれません。スクリーニングは必要な検査ですが、知る必要がなかった情報まで知ることにつながるリスクもあります。
情報の取り扱いについて
検査によって得られた情報は基本的には説明するようにしています。先天異常でも生命の危険につながるものから生命に直結しないものまで存在しています。スクリーニング外来受診までには全妊婦に超音波検査で得た情報を知りたいかどうかの確認を行っていますが、児の生命に関わる情報であった場合にはお伝えせざるを得ないこともあります。性別など知り得たくない情報があった場合には適宜お伝えいただければ対応させていただきます。
現在188足球直播_篮球比分¥体育官网感染症により、健診や分娩など制限をかけています。パートナー含めた家族と大切な胎児の情報を共有したいと思われることは重要と考えます。妊婦健診時などで写真や動画を撮影することを禁止していませんが、あくまでご家族間で共有していただくことを目的としています。SNSなど他者の目が触れる場所にアップロードすることは控えていただくようにお願いします。

当院の周産期統計

総分娩件数(件)
早産率(%)
帝王切開率(%)
合併症妊娠
周産期合併症

腫瘍

婦人科腫瘍について

産科婦人科の中で婦人科腫瘍領域は、良性の子宮筋腫や卵巣腫瘍から子宮?卵巣?卵管の悪性疾患を専門としています。高知県では1年間に子宮頸癌に70-80人、子宮体癌に90-100人、卵巣癌に80-90人の方が罹患します。当科は県内唯一の婦人科腫瘍専門医を有する施設としてこれらの婦人科悪性腫瘍を専門に治療を行っています。その他、外陰癌や腟がん、子宮肉腫など10万にあたり6人以下とされる希少がんなどの治療もゲノム医療を含めて行っております。
子宮頸がん
子宮頸部に発生する悪性腫瘍です。この悪性腫瘍の問題点は30-40代の女性がかかる可能性が最も高いことです。76人に1人が子宮頸がんにかかり、そのうち43%が45歳未満です。上皮内がんを含むと71%が45歳未満です。
子宮頸癌の99%はHPV(ヒトパピローマウイルス)であり、その持続感染から約10年で発症するとされています。ただし、多くは前がん病変(子宮頸部異形成)を経て発症するため20歳から2年に1回の健診を受けることで前がん病変から初期で発見できる可能性が高くなります。また、HPVワクチンを接種することでその発症の多くを予防することが可能です。ワクチンで予防ができる数少ないがんの1つです。海外ではワクチン接種により子宮頸癌が希少がんになりつつある国もあります。日本産科婦人科学会でもHPVワクチン接種をすすめております。
日本では平均初産年齢(初めてお産をする年齢)が30歳を超えています。そのため、妊娠前に子宮頸がんやその前がん病変(子宮頸部異形成)にかかる方も少なくありません。
前がん病変から子宮頸癌ⅠA期までであれば円錐切除で子宮の温存が可能で、妊娠分娩ができます。ⅠA2期~ⅠB期の方は広汎子宮頸部摘出術で子宮の温存が可能です。当科ではどちらの手術も可能です。
進行した子宮頸がんでは放射線療法が選択されます。高知県内では当院でのみ子宮頸がんの根治的放射線療法後可能で、年間20人近くの方が治療されています。
子宮体がん
子宮体がんの多くは女性ホルモン依存性の悪性腫瘍で閉経前後の50代に好発します。不正性器出血を認めて受診され、子宮内膜細胞診?組織診で診断されます。多くは早期(Ⅰ?Ⅱ期)のことが多く、手術と化学療法(抗がん剤)により治療成績も良好です。
予後の良い(治療成績の良い)早期子宮体癌では、より低侵襲な治療(体に負担を減らした治療)がすすめられています。当科でも早期子宮体癌に対して、腹腔鏡下子宮体癌手術やロボット支援子宮体癌手術を保険診療として行っております。
一方で女性ホルモン非依存性な子宮体がんや希少がんとされる子宮肉腫などは進行してみつかることが少なくありません。最近は分子標的薬などの新規化学療法も保険収載され新たな治療法も行えます。標準治療が難しくなってきた方にはゲノム検査を保険で行うことができます。
卵巣がん
卵巣悪性腫瘍は非常に多くの種類があります。その中で最も多いものは漿液性癌です。その特徴は進行が早く、検診などで見つけることが難しいことです。発見時には腹水が貯留し、Ⅲ-Ⅳ期で見つかります。しかし、他のがんに比べ抗がん剤が効きやすい特徴もあるため進行がんでも治癒を目指した治療も可能です。最近はそれに加え、がん遺伝子検査結果によって再発予防の治療も発展しています。卵巣がん治療では、骨盤?傍大動脈リンパ節郭清といった広い範囲のリンパ節郭清や、病変によっては腸管切除を伴うこともあります。当科では術前の画像検査などから消化器外科の先生方と連携して治療にあたっています。
その他、稀なタイプの卵巣癌に関しても各々カンファレンスで検討し、必要があれば癌ゲノム検査なども積極的に行っています。県内他施設からの卵巣がん治療の相談や紹介にも対応しています。
卵巣癌の1割は遺伝性(もともと癌になりやすい家系である)の可能性があります。卵巣癌で多いのは遺伝性乳がん卵巣癌症候群(HBOC症候群)やリンチ症候群といわれる遺伝性疾患です。卵巣癌の診断を受けた患者さんは、HBOCの遺伝子検査を保険で受けることが可能です。ただし、この検査では血縁のある家族皆さんの遺伝性が判明するため、検査前に患者さん?患者さんの家族に遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。当科は遺伝専門医と遺伝カウンセラーが在籍しており、患者さん?患者さん家族にわかりやすく説明したうえで検査を受けていただいています。また、患者家族の方が遺伝性疾患の診断に至った後も予防的治療やがん検診(サーベイランス)も引き続き可能です。

当院の腫瘍統計

悪性腫瘍手術件数
悪性腫瘍症例数の推移
子宮頸癌 CIS/AIS
子宮体癌 子宮(癌)肉腫
卵巣癌+卵管癌+腹膜癌+原発不明癌 境界悪性

生殖内分泌

診療内容紹介

産婦人科が担当する“生殖内分泌学”とは、女性を対象とした生殖行動に関連する内分泌学を指します。生体の恒常性を保つための調節機構である内分泌現象と、卵子を中心とした生殖現象に関連する内容を取り扱います。
生殖内分泌外来で取り扱う主な病態に不妊があります。妊娠を望んでいるにもかかわらず妊娠しない期間が1年間以上に及ぶ場合を不妊と考えます。近年の晩婚?晩産傾向に伴い、また2022年4月に不妊治療に保険適用が開始されたこともあり、不妊に悩むカップルからのご相談は増えてきています。不妊治療は、排卵と性交渉のタイミングを合わせる「タイミング療法」、精子を子宮内に注入する「人工授精」、これらでの妊娠が難しい場合にはさらに高度な治療として「体外受精」「顕微授精」があります。近年、「体外受精」「顕微授精」を中心とする生殖補助医療(ART)は不妊治療の中で大きな役割を果たしており、報告では2020年度に日本で出生した子供の13.9人に1人がARTにより誕生したことになります。
対象となる疾患
  • 不妊症
  • 不育症
  • 月経異常(無月経、月経周期の異常、月経量の異常など)
  • 月経困難症(月経痛、過多月経など)
  • 子宮内膜症

診療の特徴

不妊症、不育症の原因はカップルによって様々であり、その原因によって治療方針が異なるため、まずは適切な診察?検査による不妊原因の診断が重要です。当科では、診断とエビデンスに基づいた適切な不妊治療の選択肢を提案?提供することを心がけています。
月経異常、月経困難症についても、まずは原因を精査することは重要です。月経困難症の原因となる子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などについて、近年では外科的治療の他に内分泌療法の選択肢が増えてきています。外科的治療、内分泌療法などの治療の選択肢について、そのメリットとデメリットを十分に説明し、理解してもらった上でそれぞれの病状、年齢、ライフスタイルなどに適した治療方法を行うことを心がけています。

生殖内分泌診療実績

? 2018 2019 2020 2021 2022
新規患者数 44 30 66 39 68
検査 子宮卵管造影検査 24 25 40 24 34
精液検査 32 25 57 44 52
治療 人工授精 63 45 35 84 100
体外受精 37 32 19 24 34
新鮮胚移植 5 12 2 4 3
凍結融解胚移植 19 35 13 24 34

女性ヘルスケア外来

診療内容紹介

各疾患?症状に対して、生活?食事指導、薬物療法として対症療法、ホルモン療法(OC:経口避妊薬、LEP:低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬、HRT:女性ホルモン補充療法、IUS:子宮内黄体ホルモン放出システム)、漢方療法等を行っています。また、脂質異常症治療薬、骨粗鬆症治療薬等での管理も行っています。
対象となる疾患
  • 月経関連疾患(無月経、月経不順、月経困難症、月経前症候群)
  • 更年期症候群
  • 医原的卵巣欠落症候群
  • 骨粗鬆症
  • 生活習慣病(主に一次予防)など女性医学全般

診療の特徴

女性ヘルスケア分野は多岐にわたり、思春期、成熟期、更年期、老年期とすべての世代における女性の心身のQOL維持向上のために予防医学から治療まで幅広く診療しています。思春期以降の月経不順や月経困難症、月経前症候群、月経前不快症候群、また自然の更年期症候群のみならず、医原的閉経(卵巣摘出後、各種治療による卵巣機能欠落)によるさまざまな疾患や症状にも対応しています。女性ホルモン低下による骨粗鬆症の予防や治療、生活習慣病の一次予防にも力を入れています。また、がんサバイバー女性のQOL向上にむけて他科とも連携しながら一人一人にあわせた対応を行っています。

診療実績

「更年期外来」から「女性ヘルスケア外来」に名称変更後は更年期世代のみならず、思春期女子やがんサバイバーの方の診療も徐々に増加しています。

当院の女性ヘルスケア統計

受診者数
2019年以降、受診者数は増加傾向である。
受診者数
年代別では、40?50代の更年期の方が約58%と最も多かった。閉経後もヘルスケア目的等で受診継続している方は約25%あった。10?20代も増加傾向にある。
治療別件数(のべ人数)
女性ヘルスケア外来では、更年期障害に対するHRT、月経関連疾患に対するLEPといったホルモン療法や、漢方療法を用いて治療している。骨粗鬆症や脂質異常症に対する内服加療も行っている。